夜と霧の隅で (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 夜と霧の隅で (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 北 杜夫 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101131016 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » 文学・評論 |
購入者の感想
「夜と霧」。これはナチス政権下のドイツで’41年に出された特別命令で、非ドイツ国民で国家に対する犯罪容疑者は、夜間秘密裡に逮捕して強制収容所におくりこみ、その安否や居所を家族親戚にも知らせないというものである。後には家族の集団責任という解釈がなされ、政治犯容疑者が家族もろとも一夜にして消え失せることになる。そして、この命令が、ナチスの本質をあらわす強制収容所での出来事を象徴しているということで、強制収容所での体験を描いたフランクルの作品の日本での題名「夜と霧」になっている。
北杜夫の「夜と霧の隅で」は、夜と霧命令による嵐が吹き荒れる中で決定した、不治の精神病患者に対して実施される安死術に抵抗して、あらゆる治療を試みる医師達の姿を描いた作品である。
ナチス政権下のドイツにおいてその抵抗は無意味である。それは、彼らにも解り切っていることである。それでも、彼らはあらゆることを試みる。それは、医師としての使命感なのか、人間としての使命感なのか、人間の尊厳とは何か…。透明感のある著者の文章が、この作品を、より暗く、より重たくしているのではとさえ思える。
北杜夫の作品にはユーモアと叙情性が溢れるものが多く、本作のような、明らかに暗く重たいテーマを持った作品はあまりない(数少ない中に“こども「黄いろい船所収」”という作品がある)。しかし、これも北杜夫なのである。
北杜夫の「夜と霧の隅で」は、夜と霧命令による嵐が吹き荒れる中で決定した、不治の精神病患者に対して実施される安死術に抵抗して、あらゆる治療を試みる医師達の姿を描いた作品である。
ナチス政権下のドイツにおいてその抵抗は無意味である。それは、彼らにも解り切っていることである。それでも、彼らはあらゆることを試みる。それは、医師としての使命感なのか、人間としての使命感なのか、人間の尊厳とは何か…。透明感のある著者の文章が、この作品を、より暗く、より重たくしているのではとさえ思える。
北杜夫の作品にはユーモアと叙情性が溢れるものが多く、本作のような、明らかに暗く重たいテーマを持った作品はあまりない(数少ない中に“こども「黄いろい船所収」”という作品がある)。しかし、これも北杜夫なのである。