生物学的文明論 (新潮新書) の感想

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参照データ

タイトル生物学的文明論 (新潮新書)
発売日販売日未定
製作者本川 達雄
販売元新潮社
JANコード9784106104237
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 生物学

購入者の感想

 2011年の1月から3月にNHKラジオ第二で放送された「科学と自然」シリーズの連続講座「おもしろ生物学:人間らしく生きるヒント」の活字化です。現代社会の基盤となる技術の多くは数学・物理学的発想によっています。生物の本質にたって生物学的に、つまり批判的に現代社会をみることで問題解決のいとぐちがつかめないだろうかというのが本川氏のスタンスです。
 とはいえ、『ゾウの時間 ネズミの時間』がゾウにもネズミにも独自の時間があるのだという相対主義的な観点であり、ヒト中心主義から脱却したものだったように、特定の生物の生き方が理想的なモデルになるわけがありません。最初に語られるサンゴ礁の生き物たちは、それぞれが独自の進化を遂げて多様化したものです。南の島の文化もサンゴ礁によって育まれてきたのです。このような観点は何かに似ていますね。そうです、生態学です。そして生態学は文化人類学の文化的相対主義とも相通ずるところがあります。
 生物の形とサイズを考察するスケーリングをテーマとする章があり(第四章〜第九章)、スケーリングの内容に時間を導入した本川理論が展開されます。
 第十章「ヒトの寿命と人間の寿命」の論理は本川氏の『<長生き>が地球を滅ぼす』でも述べられていました。子供の時間はネズミ的(エネルギー消費が大きい)で、老人の時間はゾウ的(エネルギー消費が小さい)である(ちなみに、生き物によって違う時間感覚を発想することは西洋人には理解困難だそうです)。ほとんどの生物は生殖を終えると死ぬ。生殖年齢を終えても生きる老後の人生はおまけである。スローライフ、清貧の思想や無私の精神が実現できるのではないか、と。
 最終章(第十一章)はナマコの話題でとじられます。と言っても、ナマコがなにか画期的な教訓をもたらすわけではありません。ナマコがいかに「変な」生き物かが紹介されます。そして「ぜんぜん可愛いくもない」。そんな生き物と付き合っていける知恵が必要では、と提案されます。本川著『世界平和はナマコとともに』ではもっとナマコの特徴が分かります。
 生き物相対主義といえませんか。0

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