ポアロとグリーンショアの阿房宮 (クリスティー文庫) の感想

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参照データ

タイトルポアロとグリーンショアの阿房宮 (クリスティー文庫)
発売日販売日未定
製作者アガサ クリスティー
販売元早川書房
JANコード9784151301032
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 テレビ版のデヴィッド・スーシェのポワロ役の最終制作作品は『死者のあやまち』でした。本来のポワロものの最後は『カーテン』ですが、ポワロの死で撮影が終了するのはあんまりだというスタッフの総意により、最後の撮影作品は『死者のあやまち』になったのでした。本文庫版のマシュー・プリチャード(アガサの孫)の「まえがき」にも撮影終了の場面が述べられています。
 本作は1955年に執筆されましたが、中篇という長さのために出版されなかった作品です。後に長編『死者のあやまち』に書き直されました。基本的なプロットはほとんど同じです。映像化作品を先に見てしまった者にとっては、シノプシスを読んでいるような感じがしました。
 短編集『クリスマス・プディングの冒険』にマープルものの短編「グリーンショウ氏の阿房宮 Greenshaw’s Folly」がありますが、題名はグリーンショウとグリーンショア Greenshore と似ているものの、まったく別の作品です。両作における阿房宮の位置づけも異なりますが、邸宅のモデルはクリスティーのグリーンウェイ邸で、『死者のあやまち』のロケ撮影もここで行われました。
 『アガサ・クリスティーの秘密ノート』の著者ジョン・カランのクリスティーの創作の秘密の分析論(14ページ)が収録されています。

 元々はミステリマガジン2014年11月号に一挙掲載された中編「グリーンショアの阿房宮」・・・レヴューしています・・・
 が文庫化されたものです。
 当初、クリスティーが教会への基金への寄付のために掲載しようと企画されていた作品らしいですが、
 作品が少し長すぎたため、お蔵入りになってしまいました。しかし、作品そのものは、長編に引き伸ばされ「死者のあやまち」となり、
 無事出版されています。なお、本作と「死者のあやまち」は、ほとんどないように相違がなく、
 作品の長さから、本作のほうが、結末を端折った様な感じがします。
 内容は、旧友であるミステリ作家、オリヴァ夫人から、急遽事件の依頼で、ランプリーンのグリーンショアの屋敷へ呼び出され、
 飛行機嫌いのポアロは、おっとり刀で駆け付け、事件の解決にあたるというものです。
 なお、本書は、本作だけでなく、クリスティーの挿画を長らく担当したトム・アダムスの「はじめに」、
 クリスティーの孫、マシュー・プリチャードの「まえがき」、さらには、ジョン・ラカンの「解説」を収録し、
 作品の成立、お蔵入りの理由、「死者のあやまち」との関係がよく理解できるようになっています。

英国ミステリの女王・クリスティの中編。
書店で目についた帯紙には、発見された幻の原稿を初書籍化、などとある。中学生のときにクリスティ作品に出会って、結局全作(ミステリのみ)を早川文庫で集めたものとしてはもう買うしかない状況である。

さてこの本は発刊によせての前書きなどがだいぶ長いが、これはこの出版の特性上しかたないのでしょう。あとがきなどにも明記されているが、ポアロもの長編「死者のあやまち」の原型となったというものだからだ。

作品は冒頭、ポアロのオフィスにオリヴァ夫人から要領を得ない電話がかかってくるところから始まる。確かにこんなシーンを遠い昔に読んだことがある気もするが、超現実派秘書のミス・レモンとの対比もあって、つい笑ってしまうところだ。パディントンからの汽車に乗り、現地に到着したポワロは屋敷の面々に紹介されるのだが、その面々はなかなかひとくせある者ばかり。イベントの余興として行われる殺人犯人当てゲーム、とくれば察しの良い読者なら展開が読める。果たして事件は発生し・・・という、もうクリスティの王道的な展開である。

かつてクリスティ作品を読み込んだわけでもあるし、たぶん翻訳も良いのでしょう、かなり古典的作品といえるはずだがいまでも違和感なく読み進められる。トリックもちゃんと意表を突いたもので、急転直下の鮮やかな解決もポアロらしくてうれしい。実は「死者のあやまち」のストーリはほとんど全くと言っていいほど記憶から抜けてしまっている(30年以上前ですので…)こともあり、とても楽しめたのである。(まだ実家に文庫が置いてあるはずなので、今度読み直してみようかしらん。)

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