農山村は消滅しない (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル農山村は消滅しない (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者小田切 徳美
販売元岩波書店
JANコード9784004315193
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 日本の政治

購入者の感想

「消滅可能性都市」を読み、自治体職員として、現場で頑張る人間として、あまりに客観的記述過ぎて疑問があり、この本を購入しました。人が集まる田舎にはキーマンがいる。勇気が湧く本です!

 本書は話題作であり、問題作でもある。私は農村振興に関わっており本書に対しては様々思うところがあったので、僭越ながらレビューを試みたい。少々長くなるが、小田切氏が論拠とするデータの検証等いくつかの検討も行っており、またこういった問題に関心を抱く方々のご意見をぜひお聞きしたくもあるので、ご一読とコメントを頂ければ幸いです。

[本書のねらいと著者について]
 本書は、増田寛也氏らが「増田レポート」で提起した主張(小田切氏によれば「地方消滅論」)を一つのきっかけとして、「今ある農山村は本当に消滅するのか」「始まったこの田園回帰傾向は、農山村に本当に無意味なものなのか」(vi頁)を明らかにする事を目的に書かれている。本書で「フィールドワーカーとしての筆者」(vi頁)は、数多くの現地調査・事例調査から得た知見を中心に、数は少ないが統計資料等の定量データを加え、地方消滅論的な主張の問題点と代替案を示そうと試みている。
 なお、小田切氏は特に増田氏との論争以降は講演会に引っ張りだこのようで、マスメディアへの出演・寄稿も精力的に行っている。また、出版不況の折でも本書と同様の主張をした著作(共著含む)を続々と刊行している事や、門下生・共同研究者の多くが一定のアカデミックポストについている事から、学問分野においても一大勢力を成している事が窺い知れる。世論形成や学界への影響力は決して小さくないだろう。

[構成]
 構成は大きく3つに分かれる。第1に序章とI章で、地方消滅論とそれを契機に登場した「農村たたみ論」を強く批判し、農山村は厳しい現状にあるものの元々は強靭性を備えており、大多数が現在も「どっこい生きている」のだと論じている。第2にII~IV章で、いくつかの事例紹介を踏まえた住民主体の地域づくりの基本モデルを提示し、政府・自治体による支援策の現状・課題を示している。加えて終章では、各地域の多様な地域づくりを実現するための社会のビジョン(増田レポートへの対案)を提案している。第3にV章で、そのようなビジョン実現の必要条件である国民の田園回帰の動向と課題を述べている。

[論理の流れ]
 具体的な論理の流れを単純化して示すなら次のようになるか。

 以前からの「限界集落論」、2014年のいわゆる「増田レポート」が引き起こした「地方消滅論」に真っ向から反論を試みた本。

残念ながらその試みは不発に終わっている。

反論の根拠として、若者の「地方回帰」の風潮、頑張っている高齢者ばかりの集落の活動等々が紹介されているが、その数は余りにも少なく説得力はない。

勿論、この風潮を座視して良いとは私も考えていないが、なら何ができるのか。それがないのだ。

「財政論で集落の将来を論じて良いのか」「頑張っている人たちの努力を無視するのか」等の意見には頷けるが、財源の9割以上が交付金、財政総額数十億円の殆どが交付金の自治体で、数人しか住まない集落まで年間数千万円の費用をかけて除雪することが、予算の使い方として本当に最良の方法なのか、私たちは直視すべき時期に来ているのではないかと思う。

タイトルから衝撃的だった「地方消滅」に反論する書である。
中山間地の地域づくりに長年関与してきた著者にしてみれば、「自立に向けて取り組もうとしている人びとのやる気を失わせるようなことは言わないでほしい」ということで、気持ちはわかる。
本書の中にも、限界集落に分類されながらも消滅とは逆に自立度を高めている事例が紹介されている。それらの事例は素晴らしいし、関係者の努力に頭が下がるが、「例外的に優れた事例を出されても・・・・」という印象があるのも事実。若者の田園回帰の動きも、明るい材料ではあるが、人口移動全体の流れを変えるほどのものなのか。
集落を生き延びさせるための取り組み支援に、どれくらいのコストがかかるのか(鳥取県の交付金制度の紹介はある)、それは「地方消滅」が主張する「人口ダム論」よりも安く、効果的なのかという点の記述があれば、説得力が増すだろう。

昨年のいわゆる「増田レポート」では、2040年の若年女性(20〜39才)人口が現状の半分以下になる市町村を「今後、消滅する可能性が高い」と判断し、2040年の推計人口1万人以下の523市町村をリストアップし、「消滅する市町村」と断定した。だが、実際のデータを見れば、こうした予測は誤っているだろう。全国の集落数は、1970年には14

中山間地に暮らすものとして勇気をもらいました。できることをやっていきたいです。

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