ヴェネツィアの宿 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルヴェネツィアの宿 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者須賀 敦子
販売元文藝春秋
JANコード9784167577025
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

過ぎ去ったイタリアでの日々を美しい感性でたどったすばらしいエッセイです。時とともに薄れていく過去も、彼女の中ではまるで現在と変わらなく、またはそれ以上に大きく存在し続けたのでしょう。家族の死などの大きな悲しみも、シンプルな言葉の中に凝縮されていて、心の奥深くから感動しました。人間が生まれ生きてそして死んでいなくなるということ。けれど確かにそこに大きな軌跡を残しているということ。須賀さんの不在も重ね合わせて、静かに私に語りかけてくれる、お勧めの一冊ですよ。ぜひ、一読あれ。

須賀敦子さんの数少ないエッセー集の中で私が最も好きなのがこの「ヴェネツィアの宿」。イタリアでの話よりも、子供時代、聖心系列の学校での戦時の寄宿生活、両親の話、フランスでの留学生活で出会った人々について書かれたエッセーを集めたもの。何度読んでも読み飽きない、そのたびに「私もちゃんと生きていかなくては」という気にさせてくれる。
私が特に好きなのは「オリエント・エクスプレス」。須賀さんの父は祖父から無理矢理継がされた会社経営に身が入らず、心配した叔父たちに家業のための視察という名目で30歳前後で1年間の世界一周旅行に出される。(須賀さんも須賀さんの母も留守番だった)須賀さんは小さい時から折に触れ、父からアメリカやヨーロッパの話を聞かされる。須賀さんの父は会社が暇になったらいつかまたヨーロッパに行きたいと思っていたが結局それは果たされず、死の床でミラノにいる娘に、かつて乗ったオリエント・エクスプレスのコーヒーカップが欲しいと頼む。その顛末については本書を読んでほしい。
まだ留学というものが「船」(それも貨物船)で行っていた時代、今のように日本にとってイタリアという国がブランドものやファッションなどのきらびやかな関心の的ではなかった時代、一生懸命、自分の生き方を模索しながら真摯に生きようとした須賀さんの苦悩が伝わってくる。

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