死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)
発売日2013-04-27
製作者池谷 孝司
販売元新潮社
JANコード9784101387116
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

本書で取り上げられている事件は二重の意味で悲劇であったと思う。

1つは再犯を防ぎ得ず若い女性が2名惨殺されたこと、2つめには加害者の悲劇的な人生に誰も救いの手を差し伸べられなかったことである。

本書では実に様々な視点から加害者の事件に至るまでの経過を丁寧に辿っている。そこで明らかにされる加害者の人生は事件自体と匹敵するほど絶望に満ちており悲劇的である。広汎性発達障害のハンディを差し引いたとしても、悲劇としか言いようがない。

加害者が刑を執行されたのは25歳の時。25歳の青年と言えば普通はどんな生活を送っているだろうか?社会人になって交遊に忙しく、人生で最も輝く時期なのではないだろうか。にも関わらず、加害者には安定した生活も楽しい思い出の1つすらなかったようである。正に苦悩と絶望だけの人生だったと推察される。

275Pから紹介される内山弁護士の加害者に宛てて送った手紙には本当に胸を打たれる。もう少し早く誰かがこのような言葉を加害者にかけてあげていれば、そして、ゴト師から足を洗わせ、まっとうな仕事を加害者に与えていたら、もしかして加害者も再犯に至らず、被害女性も人生を全うできていたのではないだろうか、と心底悔やまれてならない。

広汎性発達障害へのケア、少年院退院後の支援、困窮家庭への介入…。この事件が社会に提起した問題は山のようにあり、その1つ1つがどれも深刻で難しい問題である。しかし、我々、残された者はこれらの問題から目を背けることなく向き合って行かなければならないと思う。被害者のためにも、加害者のためにも。

本書は一見、理解が難しい凄惨な事件の背後にある日本社会の様々な問題を冷静かつ中立的に明らかにしている良書であると思う。これから司法、精神医療、障害者福祉に携わることを志している方、既に携わっている方、またこれらの分野とは関わりのない一般の方々にも広く本書をお勧めしたい。

何度か出てくるけど、まわりには理解できないみたいこの感覚。
私はすごくよくわかる。本当に「思いつかない」のだ。

小さなトラブルだけど、後から説明されて、あっそうかそうすればよかった…となることの多いこと。

渦中にいると本当に思いつかない。
それは本当に取るに足らないこと「誰かに聞けば?」「逃げれば?」等々、本当に大したことじゃない、
でも思いつけないのだ。小さなことだけどその繰り返しの毎日。

でも、私のまわりにそうやって助言してくれる人がいるから、気づくことができる。
私も自覚して、ちょっと待て誰かに聞いてみようって立ち止まることもできるようになった。

紙一重。明日は我が身。
私はこの人と何ら変わらないかもしれん。

アスペルガーだから量刑を軽くってことを言ってるんではない。
アスペルガーであることの、その本人それぞれの独特な認知や特性を理解した上での、正当なやりとりと懲罰を考えてほしいのだ。

何があっても「人を殺してはいけない。決まりだから」って、誰かが強く言わないとだめなのだ。
「そうされたらどう思う?」って感情論ではだめだ。
そのへんの理解が広まることを願います。
言わなくてもわかるでしょあたりまえでしょ、ではだめなのだ。

識者、当事者のインタビューも含めて、感情に揺さぶられることなく、事実を文章にしていること、
背景や状況がよくわかって、自分なりに考えることができました。
そういうルポでとてもよかったです。

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