統辞構造論 付『言語理論の論理構造』序論 (岩波文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル統辞構造論 付『言語理論の論理構造』序論 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者ノーム・チョムスキー
販売元岩波書店
JANコード9784003369517
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 言語学 » 言語学

購入者の感想

*『統辞構造論』
1957年のチョムスキーの著作(もとは大学の講義ノート)で、現在の生成文法理論とは異なり「言語学は認知心理学の一部」なんていう記述は一切なく、「言語学っぽい」「言語学らしい」感じの言語分析がなされている。

この著作の中にはまだ「普遍文法(UG)」「言語能力」「言語運用」「S構造」「D構造」「パラメター」などのチョムスキーの基本タームは出てこない。あえて言えば「言語構造の(一般)理論」ということば(P75)がUGにあたり、「基底にある終端連鎖」ということば(P109)がD構造にあたるか。

訳者の解説によると、この当時のチョムスキーは言語学を生物学に絡めて分析するアイデアをすでに持っていたそうだが(『統辞構造論』にはその微塵も現れていない)、そのアイデアを形にしようとするチョムスキーの苦闘が窺い知れる。

統辞論はあくまで意味を排除した形で文の分析を行うため、例えば

John knew the boy studying in the library.
John found the boy studying in the library.

の2文は形上は同じような文であり、KnowとFindの意味の違いと言って簡単に解決してしまいがちだが、この2つの文を受身文にするとその違いが現れてくる(詳しくは本書P130参照)。
言語分析と言うとどうしても意味要素を絡めて分析したくなる衝動に駆られるが、そこはぐっと抑えて、淡々と分析をしているところは流石。

*「言語理論の論理構造 序論」
せっかくなら序論だけでなく、全部読みたかった。ところどころに「『論理構造』第10章に書いてある」などという記述があるが、序論しか載っていないので参照できない。不満が残る。
しかしながら『統辞構造論』には出てこなかった生成文法のポリシーがここではしつこいくらいに説明されているので、これも必読。

*「訳者解説」
時間がなくて、解説のエッセンス中のエッセンスを読みたい人はP400〜402を読めば良い。

1950年代にノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)が提案した生成文法(変形文法)理論は、
「認知革命」と呼ばれる学問的変革を引き起こし、
言語学のみならず、心理学、哲学、数学、生物学、脳科学など、
隣接する諸分野にも多大な影響を及ぼすこととなった。
「統辞構造論(Syntactic Structures)」は、その革命の端緒となった記念すべき著作。
この「統辞構造論」は、「言語理論の論理構造(Logical Structure of Linguistic Theory)」
というチョムスキーの大部の著作に基づいており、
本書にはその「言語理論の論理構造」の序論も収録されている。
Syntactic Structuresは過去にも邦訳が出版されているが、
今回新訳を世に問うた訳者の1人は、
チョムスキーの指導を受けた、日本を代表する世界的な言語学者であり、
世界でもチョムスキー氏のもっともよき理解者の1人と言ってもいい福井直樹氏。
同じく福井氏が手掛けた「チョムスキー 言語基礎論集」や「生成文法の企て」(いずれも岩波書店刊)
でも垣間見られた、福井氏の深い理解と洞察に基づく、
見事で読みやすい日本語の訳文を読むにつけ、
翻訳者の果たす知的役割の重要性と、
時代や専門的なディテールの変遷によって揺らぐことのない
普遍的な価値をもつ学問的著作を世に問うことの意味を再認識させられる。

多くの読者にとって本文に勝るとも劣らない魅力なのは、
福井氏が本書のために書き下ろした
「【解説】『生成文法の企て』の原点―『統辞構造論』とその周辺」
だろう。
本文を読んだだけではわかりにくい、
本書の言語学研究における理論的位置づけや、
「認知革命」の背景となった関連する諸科学の状況、そして
本書をはじめとする研究がチョムスキーによって生み出された個人的・社会的経緯等について、
言語学のみならず科学のさまざまな分野に造詣が深くチョムスキー氏と親交のある福井氏が、

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

統辞構造論 付『言語理論の論理構造』序論 (岩波文庫)

アマゾンで購入する
岩波書店から発売されたノーム・チョムスキーの統辞構造論 付『言語理論の論理構造』序論 (岩波文庫)(JAN:9784003369517)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.