表徴の帝国 (ちくま学芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)
発売日販売日未定
製作者ロラン バルト
販売元筑摩書房
JANコード9784480083074
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

 「○○学者」と固定されたエクリチュールを押しつけられることを極度に嫌ったバルトの著作には、常に「捉えにくさ」がつきまとう。しかしその身軽さが、〈日本〉に出会うことで一瞬凍り付いた、そのような印象がこの書にはある。そしてこの書はバルトが確立した、「記号学」の方法論の頂点でもある。また一方でこれ以後、バルトはその「記号学」からさえも身を躱し、「意味と意味の空隙」への愛を表明し始める、その端緒ともなる書。
 とはいえ、この書を「記号学の教科書」と捉えてはならない。「すぐできる易しい記号学」ではなく「バルトにしか不可能な、センスと卓見に溢れた記号学」である。従って読者はこの書を前にしてひたすら唸り、溜息をつくことしかできない。例えば俳句に関するバルトの指摘はただの一語であり、そしてその一語以上に俳句の有り様を的確に示した評者を未だ知らない。
 また一方で、これを単なる「日本文化論」と捉えてはならない。ここに描写された「日本文化」は、1970年代のものであり、我々からさえ遙かに遠い。

 つまりこれはロラン・バルトによる日本論。ではなく、バルトによる記号論的日本解釈。でもなく、バルトによる西欧式「意味の充満」批判。これが日本であると信じてはいけないが、これがバルトの目指した「空」であると考えるのは正しい。

 記号に対応する意味はない。シニフィアンに対してシニフィエはない。表に対して裏はない。

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