日本人のためのイスラム原論 の感想

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タイトル日本人のためのイスラム原論
発売日販売日未定
製作者小室 直樹
販売元集英社インターナショナル
JANコード9784797670561
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » イスラム教 » 一般

購入者の感想

イスラム教はなぜあんなにも短期間に多くの信徒を獲得できたのか、ずっと疑問に思っていた。

キリスト教は、神の絶対性の究極の論理的結果としての「予定説」(最後の審判によって救われるかどうかは、人が生まれる前から、絶対神によってあらかじめ定められており、誰が救われるのかは人知では分からない)という、信徒にとてつもない緊張感を与える教理を持つのに対し、
イスラム教は、「宿命論的予定説」という、因果律と予定説のいいとこどりをしたような論理構成をとっているため、キリスト教に比べ、人々に格段に受け入れやすいように作られている。

イエスによってアダムとイブに始まる人間の原罪が贖われた、とされるキリスト教においては、畢竟、イエスの神性を主張せざるを得ず、そのため、ニケア公会議で「三位一体説」という論理的に理解しがたい説をとったが、
イスラム教は、イエスも、マホメットでさえも、預言者(=人間)に過ぎない、という、「唯一絶対神」という存在に論拠する立場からは、非常にすっきりとしたものとなっている。

ギリシアの学問は古代ローマに受け継がれたが、西ローマが滅んだ後は、ギリシアに興味のなかったゲルマンには引き継がれず、イスラムに引き継がれた。聖書研究すらも(もはやヨーロッパはギリシア語を読むことができない)、ヨーロッパでは、イスラム経由で行われた。イスラムは1000年に渡ってヨーロッパをリードした。

しかし、サラセンを滅ぼしたモンゴルもイスラムに改宗したというのに、十字軍遠征に失敗したヨーロッパはついにイスラムに改宗することはなかった。これが、イスラムに残る、「十字軍コンプレックス」の根底にある、という。
トゥール・ポワティエ間の戦いの後に、イスラムがさらにヨーロッパに攻めていれば。
トルコのイェニチェリがウィーンを攻め落としていたら。
ヨーロッパは今頃ターバンを巻いていたかもしれない、と著者は述べる。

なぜヨーロッパとイスラムの1000年に渡る関係が逆転したのか。

これが、難解なるキリスト教の「予定説」の故である、という。

小室さんというのは、複雑な人だと感じます。彼の経済学者としての華麗な経歴
(それもミシガン、ハーバードや京都大学理学部の経歴)や
本格的な論文を読んだことがあれば、数学や統計学に熟知した極めて
正統的な「科学者」だということは、わかるはずです。たしかに社会科学の抽象化作業は、素人目には、きわめて理解しがたいです。
しかしそれにしても、なぜ、これほどまでに誤解を受けやすいおおざっぱな文章で、僕たちに語りかけているのか?。
厳密的な定義で文章を構成して、しかるべき場所へ公表すれば、簡単には批判を受けがたい超一流の社会科学者なはずなのにです。僕は、小室さんが学問のタコツボのなかで戯れるのではなく、よりたくさんの人に「わかりやすく社会科学の成果」を理解してほしいから、こうした「原論」のシリーズをかいているのではないか、と思っています。
そういう視点で見ると、彼のおおざっぱな文体は、世間に概念を共有化させる戦略と考えられるのではないでしょうか。
だって、「たくさんの人に読んでもらう」ことなくして、概念の一般化はありえないですから。
本質的に、教育者としてのセルフイメージが強い人なのかもしれませんね。実際、小室さんを師と仰ぐ人は、社会学者の宮台真司さんや橋爪大三郎さんなど優秀な学者が多いですもんね。
このイスラム原論は、オーソドックスなマックス=ウェーバーの社会科学の業績の簡易説明版に感じます。
キリスト教に比べると、イスラム教は極めて安定的な宗教です、というのは私は納得しました。
もちろん抽象化されたモデルですから、それで全ての現実に適用できるとはいいません。けれど、これほど安定的な宗教を信じる人々を、911のようなテロに追い込んだ国際政治システム・グローバル資本主義が、
無批判に絶対的に正しい、とはさすがにいえないような気がします。
アフガニスタンの仏像の破壊も、たしかに国際政治的には無知ではあるけれども、コーランの原点を考えれば、きわめて納得できる行為です。こういう宗教を信じる人の根源的なモチヴェーションを理解しなけ
ば、コミュニケーションなどできるものではないでしょうね。

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