飲めば都 (新潮文庫) の感想

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タイトル飲めば都 (新潮文庫)
発売日2013-10-28
製作者北村 薫
販売元新潮社
JANコード9784101373331
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

日常の謎、というよりは単なる日常。文章もくどく感じられる。お酒の話しもあまりでてこない。

「私と円紫さん」シリーズが落語文学の新機軸なら、こちらは北村流「駄洒落文学」(?)の誕生か。そう思わせるほどに、おもしろいフレーズが満載。「さても監禁たますだれ」「裏地ミール・ホロビッツ」「あられもなけりゃあ、かきもちもない」など、大いに笑わせてくれます。まァ、題名からして『住めば都』ならぬ『飲めば都』ですから、予想通りと言えば言えますが…。
また出版社が舞台なのも、うれしい限り。これが、本好き読者にはたまらない理想の職場なんですナ。しかしそんな夢の職場でも、原稿を忘れて青くなったり、葬儀の花輪の名前が間違っていたり、人事異動に一喜一憂したり、と、エピソードはまさに現実の職場そのもの。特に、花輪や人事異動の話はどんな会社にもありがちで、サラリーマン生活の長かった者としては身につまされる思いでした。
日常に潜む謎への目配りも充分で、中でも「指輪物語」の哀切、「智恵子抄」の意外性などが秀逸。随所に散りばめられた名言も読みどころで、「愛は貧乏以外の全てを越える」「恋愛はうっかり、結婚はなんとなくするもの」など、思わずニヤリとさせられます。特に気に入ったのは、主人公が純朴な恋人に対して抱く「下には下がある」という感想。ユーモラスな中にも真理を突いて鋭ドイものがありました。全編、酒と肴のオンパレードで、読後にほろ酔い加減になるのも新趣向。その食通振りも、一般サラリーマンが少し背伸びした感じなのが好ましく感じました。
あとぜひ付け加えたいのは、主人公が、恋人の両親に挨拶に出かける車中での、微妙ないさかいの場面。《免許証、持ってないくせに》と思う主人公と「あっちに着いたら丸くね」と言う彼の心のすれ違いは、まさに恋人たちの現実を描破した感があります。歳をとると、人生に完璧はなく、理想の恋人たちにも日常の小さなほころびは有るのだ、とつくづく思いますが、そんな人生の真実をよくぞ描いてくれた、と思った次第です。もちろん作者は、そんなほころびにもめげず幸せになれるのもまた「人生の真実」なのだと、読者を励ますのを忘れていませんが…。
笑えて、泣けて、考えさせる「新シリーズ」の開幕。早く、次の「飲み会」に誘ってもらいたいものです。

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