「自分」の壁(新潮新書) の感想

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参照データ

タイトル「自分」の壁(新潮新書)
発売日2014-12-19
製作者養老 孟司
販売元新潮社
JANコード登録されていません
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 思想・社会 » 思想

購入者の感想

 サザエさんでおなじみの長谷川町子氏の短編に「マンガ幸福論」というのがある。ある裕福な家庭に生まれた男の子がいて、それを不愉快に思った意地悪な神様がその子の人生を不幸にしようと企てる。実家の破産、両親の事故死などに加えて最終的には乗っていた船が沈没し、無人島で動物相手に孤独な余生を過ごすという筋書きを作り、実行しようとするが親切な神様がそれを阻止し、男は順風満帆な人生を歩む。

 やがて立派な学歴を身につけ、財をなし、社会的地位を得た男は臨終の床につくがその時意外な言葉を発する。「自分の人生はちっとも幸せではなかった」その男にとって幸福な人生とは「人との付き合いを避け、無人島に住み動物を友として過ごす」ことで皮肉にも意地悪な神様が計画した不幸な人生だったというオチで終わる。

 本書を書いたの養老先生もこの主人公と同じ気持ちなのだろう。名門大学を出て医者になり、本を書いて名前も売れ、社会的地位と財産を築いた。で、その人生が終わりに近づいたときふと気づいた。「俺の人生はたいして幸福ではなかった。もっと他人の目を気にせず自分本位に生きればよかった。いっそ乞食にでもなってたほうが人生をより楽しめただろう」と。

 本書は老境の域に入った養老先生の放談集である。

 それゆえ内容や主張には矛盾もみられるし、つじつまの合わない箇所もたくさんある。しかしながら、養老先生の主張は一貫している「もっと自分本位になるべきだ。他の人の目を気にせず自分のやりたいことをやれ」

 本書のタイトルである「自分の壁」とは世間体や周囲の評価を気にしているあまり、自分自身の本能や願望に対して抑制をかけてしまうことである。その抑制を取っ払って「もっと自分に自信につけよう」というのが本書の主張である。

 個人的には「ステイタスを手に入れたところで根回しなど邪魔臭いことばかり」反原発問題も震災の一連の復興運動も根っこは「他者からの評価を得て、自己満足に浸りたい」とこき下ろしているのは痛快だった。

 自分の人生に自信がない人にはおすすめ。

もう、お世話にならないだろう。と腹を決めていたのが、
ブックオフで手に取り読んだら、以前よりパワーアップしてらした・・・。

まず読みやすくなった。
養老さんの本にしては画期的なことである。
丁寧な言葉遣い、略さない文意。編集者の努力の賜物だろう。

自分の頭を使って、その後のことや、反対の先にある待っているもの。
言葉の意味するもの。を自分のねちねちとした考え続けるクセでもって、
極端な賛成と反対の中庸を、古くは個人的な体験から「そうじゃないでしょう」と
縦横無尽に切っていくもののミカタ(養老観)が相変わらずお見事で、
(いや、身体論や環境、生物、政治なんかをバターナイフのように取り出し、
ぺたぺたと養老節に塗りたくっていく技は以前よりも磨きがかかっている。)
読みやすい文体の中で、すーっと気持ちがよく、喫茶店で一気に読み終えてしまった。

やっぱ、きちんと自分の頭で考えるというのは何よりの確証と自分の自信につながる、宝だと思う。

よく、知識人なんかは、若い頃の旅先の思い出やある事件なんかを契機に、
戦争反対や左翼思想につながったりしていくんだが、
その先の意味するものや、反対側のことを考える勇気。
そして何よりもそれは正しいのかと自問自答する器量と決断が足りてないか、
あるいは、意図的に、頑なに<現実>を見ようとしないんじゃないかと疑ってしまうときがある。
それ以降、大概そういう知識人は頑なにある主張を押し通そうとするんだが・・・

そういう自分を疑うこと。
そして、何よりもずうっとねちねちと考え続けるといいうこと。
これが大事だと思う。

養老さんは多分この理由で、世界でも稀有で有数のアタマが丈夫な知識人だと思う。
若い人に読んでもらいたいんだよなぁ。

読後に何とも言えない閉塞感がありました。粗探しは好きではないですが、この閉塞感を打破するため敢えて書きます。

はじめは脳のお話で脳の空間定位の領野が壊れた脳外科医の体験から自分と世界の境界についての考察は面白く、おー自分の壁だ、壁が無くなるんだとワクワク。自分は共生と共に成り立つと。それは大自然やミクロなウイルスとの共生と幅広くと、ふむふむ。
でもそれも4章ぐらいで終わります。自分とエネルギー問題あたりで、エネルギー問題は自分の問題。この辺は自分の壁というよりエネルギーの壁になっている。
特に気になったのは、戦中よりましという視点。それでは我々(戦後)はぐうの音も出ません。それは伝家の宝刀ですよ。

ついで7章では政治の壁となる。政治は現実に対して無力だと。自分はあれ何処に。
テーマが異なるのに自分というテーマで読み進めるには無理があるのです。

何か閉塞感を打破する新しい切り口を期待したのですが、最後までありませんでした。
感想を書くにも掴み所がなく、話が集束していかないのですから訳が分からない。

9章以降は読むのも辛く、堂々巡りのお説教になっていく。これは情報の壁、世代の壁でしょうか。
各章ごとに様々な壁が現れるので、あれ何のテーマの本を読んでいるのかしらと混乱してきます。

よくある売れたらさあ続編、さあ今度は何の壁にしましょうか的な出版社の悪のりですね。
私もウダウダとあーだこーだと居酒屋でくだを巻くのは好きな方なので部分、部分は面白い。
しかし、出版物としては物足らない。構成も含めて、ファンを集めた講演会ならOKでしょう。
それ◯◯の壁やん、とツッコミながら読むと案外楽しめるかも。

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