黄色い目の魚 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 黄色い目の魚 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 佐藤 多佳子 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101237343 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » さ行の著者 |
購入者の感想
途中で読むのを止めたくなる小説がある。本書にも何度「もう止めたい」と感じたことか。あまりにも痛切で、胸苦しくて・・・いい大人が高校生の恋模様に何を今更、と思うが、本書は年齢不問の超越的な恋愛小説なのだから仕方ない。
主人公は、16歳の木島悟と村田みのり。はじめに小5の木島の章と中1のみのりの章があり、高校2年で同じクラスになったところで物語は本格始動する。各々の視点で交互に6章が描かれる。
16歳はバランスの悪い年齢だ。大人になりかけの過渡期。自分の気持ちが定まらない。感情の針が激しく振れる。エネルギーが充満して出口を探している。そんな時期に、サッカーと絵を描くことが好きな木島と、描けないが絵が大好きなみのりが出会う。二人は揺れながら、揃わない足並みで、けれど真剣に心を通わせていく。文章もセリフもなんてセンスがいいのだろう。それ以外にないような文言が連ねられていて、二人がひかれ合っていく理由が、プロセスがわかりすぎるほどにわかる。泣きたくなる。
障害もある。アクシデントもある。年齢相応の悩み―自分の核となるものの模索、可能性と向き合うことへの怖れ、友人関係・・・そういったものを忽せにしないことがリアリティを生む。リアリティと言えば、二人を結びつける「絵」の扱いの丁寧さ。著者の『しゃべれどもしゃべれども』の落語もそうだが、人と人との間に介在する素材をとことん書き込む作家だ。どちらがメインかわからないぐらい徹底して。この点でもって凡百の恋物語と一線を画するのだ。
多くの人間の中からたった一人を選び、その人に選ばれ、長い約束を交わすことがいかに大変なことか。恋は易くない。本書を読めば嫌でもそれを知らされる。
主人公は、16歳の木島悟と村田みのり。はじめに小5の木島の章と中1のみのりの章があり、高校2年で同じクラスになったところで物語は本格始動する。各々の視点で交互に6章が描かれる。
16歳はバランスの悪い年齢だ。大人になりかけの過渡期。自分の気持ちが定まらない。感情の針が激しく振れる。エネルギーが充満して出口を探している。そんな時期に、サッカーと絵を描くことが好きな木島と、描けないが絵が大好きなみのりが出会う。二人は揺れながら、揃わない足並みで、けれど真剣に心を通わせていく。文章もセリフもなんてセンスがいいのだろう。それ以外にないような文言が連ねられていて、二人がひかれ合っていく理由が、プロセスがわかりすぎるほどにわかる。泣きたくなる。
障害もある。アクシデントもある。年齢相応の悩み―自分の核となるものの模索、可能性と向き合うことへの怖れ、友人関係・・・そういったものを忽せにしないことがリアリティを生む。リアリティと言えば、二人を結びつける「絵」の扱いの丁寧さ。著者の『しゃべれどもしゃべれども』の落語もそうだが、人と人との間に介在する素材をとことん書き込む作家だ。どちらがメインかわからないぐらい徹底して。この点でもって凡百の恋物語と一線を画するのだ。
多くの人間の中からたった一人を選び、その人に選ばれ、長い約束を交わすことがいかに大変なことか。恋は易くない。本書を読めば嫌でもそれを知らされる。