建築の大転換 の感想

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参照データ

タイトル建築の大転換
発売日販売日未定
製作者伊東 豊雄
販売元筑摩書房
JANコード9784480860767
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

 建築家というクリエーターと宗教学者が対談の中で、震災後の再建を契機に見えてきた建築ほんらいのありかたを語ってゆく二章までの部分が、具体的でおもしろく、かつスリリングでした。

 建築とは自然である土地に「人間が頭で考えた人工物をのせる」ものではない。
 被災者との対話の中で見えてきた、自然に対して開かれた建物。
 対談に一部参加している建築家の藤森照信が、自作の美術館が模型のように見えてしまった、という経験から、土地と交感する建物、生えてくる建物を語ったり、中沢が大地の女神は渦巻くものであり、その上にいかに線形構造の寺院を建てるかという、人類の無意識ともいうべきものを指摘したり、伊藤が(外と内を)分けない建築を実際に仙台に実現した話、それに中沢が「キアスム」(交叉)という概念を入れたり、と、たいへん活発で刺激的な対談が続いてゆきます。

 不動産屋と金融資本が考える土地と、ほんらいの神話的な土地、自然の土地は違うのだ、というところへ両者の議論が一致してゆくのが印象的でした。
 建築家の創造性の混沌やひらめきに、中沢が言葉を与えてゆくというか、そういう構造です。
 こうしたシャーマン的なコメンテーターとしての中沢の魅力が堪能できる二章が、特にお勧めです。気がつかなかったのに、言われてみると、はっとなり、人類の無意識の古層をタップされた気がする、そんな発言に満ちています。

 三章「エネルギーと建築の大転換」は、これまでも中沢が語ってきた贈与や交換の歴史、「エネルゴロジー」論で、それまでの二章に比べると抽象的、まとめあげすぎている感じで、あまりぴんと来ませんでした。中沢自身が154ページで述べているように、「世界はこういう風にしてできているというビジョンがつかめたら、それをまずイメージで一種の彫刻作品のように削りだしてみる。それからそれを言語に変えていく作業に取りかかる」書き方なのだとしたら、彼の場合、言語に(というか概念に)変える前までの直感ビジョンが一番心に届くという気がします。

 その意味で『アースダイバー』好きな読者にお勧めしたい一冊です。

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