通貨「円」の謎 (文春新書 923) の感想
参照データ
タイトル | 通貨「円」の謎 (文春新書 923) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 竹森 俊平 |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784166609239 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 投資・金融・会社経営 » 一般・投資読み物 |
購入者の感想
『通貨「円」の謎』とは、巧いタイトルを考案したものである。内容は、謎解きとは無縁で、第1章と第2章は、「アベノミクス」の経済学的考察に充てられている。第3章は金融危機問題、第4章は実質金利に関する論考である。実質金利は、今日の金融政策論ではコアとなる概念であるが、紙幅の制約のためか、残念ながら10頁前後の分量である。本書には、いくつもの重要な指摘が含まれているのだが、「成長の原動力が『外需』、つまり『輸出マイナス輸入』だとする考え方は、根本的な誤りである。(中略)単純に『輸出』を目指せばよいのである」(p.234)はとくに重要な指摘である。これは至極当然のことなのだが、大多数のエコノミストはこのことを明言してこなかった。いずれにせよ、竹森氏の多作と、それでいて決して粗製には陥らない著述の用意周到さには感服する。新書版で254ページという手ごろな分量であり、なおかつただ1行の数式も書かれていないから、ビジネスパースンの通勤時間読書にはもってこいである。この内容で本体価格780円であるから、本ほど安い買い物はない。