無名都市への扉 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ) の感想

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参照データ

タイトル無名都市への扉 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)
発売日販売日未定
製作者岩井志麻子
販売元創土社
JANコード9784798830179
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » SF・ホラー・ファンタジー

購入者の感想

現代では、何事においても、名前があるということは存在の前提条件となる。
つい近頃も何軒かニュースに登ってきたように、隠された子供が無国籍のまま、教育も満足に受けられず、
まともな仕事につく術もなく、結婚もできず、
まさしく方的には存在しない人間として二十年近く生きてきたということが話題になった。
無国籍、無戸籍とは、すなわち、「名前がない」ということだ。
名前がなければそこに存在しているはずのものが見えないのだ。

こういった、昔はなかったような「恐怖」。
その色合いが、「無名都市」に加えられた。
こんあ怖ろしい物語、書く人はどうかしている。

ところが、その「どうかしている」作者が、キャラクターとして冒険するはめになるのが、巻末に収録されているリプレイ。
TRPGインセインのシステムを利用したこのリプレイ、
ホラーTRPGではままることとはいえ、
小説弐篇の演出する恐怖を覆すような、
抱腹絶倒のリプレイになっている。
いや……まあ、リプレイってそういうものだよね……w
そんなデザートまでついた本書、こたえられない一冊と言えるのではないだろうか。

●岩井志麻子「無名と死に捧ぐ」
悪環境の日々の生活から這い上がって来た女性を主人公としたピカレスクロマン風の作品。もっともヒロインを通して描かれるヒロインの母親の方が真の主人公と云って良い程、強烈な印象を残す。クトゥルー神話と云われないと、読んでもそうと気付かない作品。
正直、本作を読んで作者とクトゥルー神話とは相性が良くないと想った。いや、「邪神宮」に掲載された短編を読んだ時にもそう想ったが、あの時は頁数が極端に少なかった事と他にも相性の悪い方がおられた事でその印象が薄まっていたのだが、今回、読んで確信した。この作者にクトゥルー神話を書いて頂くなら、人間が怪物化するか何かで兎に角元凶を人間の心の暗部とし、どんな化け物が出て来ようと人間であった時の人格と記憶(恨み等、一部の断片であっても良い)を残していなければ・・・但しクトゥルー神話の恐怖の対象は人智を超えたものの実在に有るので、人間の人格そのものを恐怖の対象として描かれる作者の作風では、クトゥルー神話としてえらく座りの悪いものに成ってしまうだろう。ラストの、怪物よりも「信じてもいない神のために、神話なんか作れる人間の方が恐ろしい」と云う一文に見られる通りだ。もし作者が本気でCthulhuを出してヒロインを襲わせたりしたら・・・喰われたヒロインが逆にCthulhuの体をのっとってしまいそうな・・・この作者の描く恐怖とは、そう云ったものなのだから。
なお、タイトルがダジャレなのも、この作者ならでは。
●図子慧「電撃の塔」

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