私が出会った最も美しい本

これほど美しい本に出会ったことがない、
と言ったら嘘になるだろうか。

この本を手に取れる人は本当に幸せだ。

心に静けさとともに、
仄かな灯りを灯すような読書がそこにある。


この素晴らしい写真家は日本ではほとんど、
知られていない。

須賀敦子さんの河合文庫のコレクションに遥かな美しさを与えている表紙に使われていること、

そしてこの本の表紙にも表れている珠玉のモランディのアトリエの写真がモランディの画集に添えられて来たこと、

それらでしかここ日本では人目に付かれてこなかったと言っていいと思う。


思わず書店で声をもらした、
素晴らしいが寡黙なこの写真家の本が日本語で読める様になるとは、

そしてこんなにも美しい本として出るとは、
思っていなかったから。


秘密の隠れ家のようにして彼の作品を眺めて心を慰めて来た自分には、

広く知られることに一抹の寂しさも感じるけれども、

しかしそれ以上にヴェンダースとエグルストンが愛する、

この静謐であたたかなフォトグラファーズフォトグラファーの本が、

このようにまとまった形として読める様になったのは本当に素晴らしいことだ。


願わくば多くの人が、
人生の伴侶となるような彼の作品と出会い、
静謐さと安らぎをもたらされることを。

最後になりますが出版社の方、
翻訳の方々にこのように美しい本を世に出して頂いたことへ
惜しみない讃辞を送らせて頂きたいと思います。