「動物とハードボイルド、稲見氏の原作と漫画家・谷口氏の幸福な邂逅。｣

　谷口ジロー氏の得意とする探偵と動物物の要素を重ね持った稲見氏の原作を多少のアレンジを加えながらもほぼ忠実に漫画化した誠に渋い感動作です。

　主役の失踪した猟犬専門の探偵「竜門卓（りゅうもんたく）」は、
自分に課した仕事のルールに厳しいが故に経済的には困窮しており、
相棒の人に慣れた狼、
ジョーと共に猟でも糧を稼ぎます。


　競走馬の調教で名高い西日本海ファームのオーナー｢菅井」より依頼を受けた訳有りの仕事：犬の捜査は実は添え物で、
実は往年の名馬を連れて失踪した老厩務員田畑の探索を引き受けます。

　合間に前巻で竜門の助力で盲導犬を手に入れる事が出来た家庭と恩人の失踪した猟犬を探すエピソードを取り入れながら一巻で綺麗にまとめて居ます。

今回のテーマでは猟犬のエピソードはやや脇に追いやられて居ますが、
実に味わい深い作品です。

　氏の過去の名作にも犬が絡む物が幾つか有りましたが、
本作でもその力は存分に発揮されて居ます。

　問題の発端である田畑、
成田空港建設反対デモに参加後、
田畑と合流した浪人生・健介、
西部劇の頑固な牧場主を彷彿とさせる菅井とその娘レイコの描写には奥行きが有り御都合主義ではありません。

　そして夜道で気晴らしに馬を追い廻す暴走族や銃を持った暴漢と主人公竜門とジョ―が見せる格闘の素晴らしいアクションも堪能出来ます。


　谷口ジロー氏ファンの方、
良い漫画をお探しの方、
大いにお薦めです。


　願わくは「あとがき」に有る様に｢完結｣と謳っている本作の続編を拝見したい物です。