バランスが取れた「白蓮本」。彼女の生涯を知る入門編として勧めたい
再度読み直した。
最初に速読した時の評価を上方修正したい。
テレビドラマのブームの前に出版されていた「白蓮本」のひとつ。
出生から晩年にいたるまでの生涯を、
彼女の歌とともにたどってゆく。
文章も練られていて、
朗読してもいいくらいだ。
過去、
柳原白蓮を扱った著作は多数あるが、
その解釈は、
当時、
週刊誌もどきのゴシップ記事で商売にしていた朝日新聞の「スクープ」の解釈によったものが多く、
事実を学ぶにはあまりにも偏り過ぎていた。
つまり、
朝日新聞が誘導したように、
「皇族につながる女流歌人の白蓮が、
姦通罪を恐れず、
学生と駆け落ちし、
旧弊の代表者たる、
伊藤伝右衛門のもとを去った」という画一的な認識を強いる。
白蓮の側(=当時の朝日新聞の論法)に立ち、
論じる。
そういう本が多かった。
この著作は、
そんな「白蓮本」とは、
異なる。
彼女の歌を通じて、
彼女の気持ちを再現しようとする試みにも共感するが、
男として「嫁さんに逃げられる」というとんでもない恥をかかせられた伊藤伝右衛門の側にも踏み込んで、
きちんと章を割いている。
著者自身が、
伝右衛門が活躍した福岡の九州大学に学んだこともあるだろう。
地元の言い分、
被害者の立場にも立ってみようではないか。
そうした平衡感覚が行き届いている冷静な本だと思う。
とてもバランスが取れた「白蓮本」だと思う。
彼女の生涯を知りたいと思う人の入門編として、
この一冊を強く勧めたい。
その他の感想
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