死の深奥に挑む者たち

　「タナトノート」とは「死世界飛行士」のこと。
人類永遠の謎、
死後の世界に挑む冒険者を描いたこの小説を最初に読んだ感想は、
「やられたー！」でした。
ずっと以前、
「こんなテーマで小説を書いたら面白いんじゃないかな」と考えたことがあったからです。

　でもその次の瞬間、
「自分じゃここまで仕上げるのは無理だな」と思い直しました。

　「死」は誰もが一度は考えたことのあるテーマでしょうが、
ともすると暗くなりがちなそのテーマに、
知識とラブロマンスと冒険を織り込んで一級のエンターテイメントにしてしまったのがこの小説。

　こんな重いテーマからこれほどのエンターテイメントを作ってしまうなんて、
本当に驚きです。
「死」という誰もが知っている題材なだけに、
他の誰かが思いついてもおかしくない物語なのですが、
こんなに極上の一品に仕上げることのできるのはこの作者だけでしょう。

　「宗教」や「臨死体験」についての知識も豊富に盛り込まれており、
読んでいくうちに「死後の世界は本当にこんな感じなんじゃないかな」と思わされてしまいます。

私はこの物語を読んでいくうちに数々のドラマチックなシーンが目の前に浮んできました。
きっと、
映像向きの物語なのでしょう。
映画化されないものだろうかと、
願わずにはいられなくなる小説です。