血沸き肉躍る19巻

血沸き肉躍る、
とはこの19巻のためにある言葉です。


前巻の壮絶な戦いで両軍ともに傷つき、
疲弊しきったレーム帝国軍とマグノシュタットの
魔導士軍団、
そこへ漁夫の利を狙う形で進軍してきた煌帝国の大軍。

しかし三国を巻き込んでの戦いは思いがけない方向へ向かいます。


アラジンが（そしておそらくはユナンが）最も恐れ、
回避しようとしていたものが解き放
たれます。

目前に迫った世界の崩壊を防ぐため、
アラジンはアリババや、
他の王の器たちの力を借りて
立ち向かう決意をします。


ドラマチックな展開の中で、
煌帝国の「王の器」たちが（一名除く）勢揃いする様は圧巻です。

魔装モードの王たちは一人ひとりが神話の神様たちのように華やかなので、
この見開き
ページのためだけにでもこの巻を買ってよかった！　それくらいワクワクします。

地上ではしばらくお見限りだったジンたちも、
これでもか！というくらい登場します。


ある意味華やかな戦闘の裏側で、
人間的な魅力にあふれた個々人の物語がきっちりと
描かれているのも印象的です。


残り数日の命を宣告されていたティトスは、
自分が救ったマルガに導かれて流れ星の
ように短い一生の中で自分のなすべきことを見出し、
やり遂げます。


怒りと狂乱のうちに世界崩壊の引き金をひいたモガメット校長は、
おのれが生涯をかけて
憎んでいたものが何だったのかを知ります。


ティトスの選択とそれが生んだ結果に、
シェヘラザードは超然とした巫女姫の顔をかなぐり
捨てて母としての怒りと悲しみをむき出しにします。


個人的にイチオシだったのは紅覇皇子。

前々から女の子みたいな容姿のわりに好戦的だったり漢前だったり、
複雑なお子だなあ
と思っていましたが、
彼は醜く穢らわしいと見下され、
見捨てられて、
日なたを歩くことを
許されてこなかったものたちにとっての「日陰の者たちの王」でした。