典型的ファンアイテム

庄内藩士が受けた教えの『南洲翁遺訓』、
佐藤一斎『言志四録』より座右の戒めに抄出したとされる101ヶ条『手抄言志録』、
語録『遺教』、
漢詩や祭文など『遺篇』、
書翰集『遺牘』、
『逸話』の6編と巻末に編者による「書後の辭」からなるが、
分量は少ない（全108頁）。
表紙にある有名な肖像画の由来も載るのがファンには一寸嬉しい。

現代語訳などは一切なく、
『手抄言志録』の漢文のみ [譯] が付けられているものの、
書き下し文とかわらないのが可笑しい。
その他の漢文は訓点のみ、
『遺篇』の漢詩は改行もなく読み辛い。
加えて戦前の発行なので文語体、
漢字は旧字体、
かなは歴史的仮名遣、
フォントも当時の活字と、
慣れていなければ読むこと自体が大変。


人柄の好さの様なものは確かに伝わってくる。
だが”大西郷”信奉者という訳でもない限り、
現代人が無理に原文で読むこともなかろう。

畢竟「敬天愛人」を「天を敬い…」などと訓むのは大間違いで、
正しくは「敬して」＜主一無適＞であることにさえ気付ければ十分。
清正公とも繋がって面白い。

変に気兼ねなんかせずに、
現代語訳であれ何であれ”誠意を以て”読める方が、
西郷どんも喜んでくれるのではなかろうか。