竜巻メカニズム解明に挑む研究者を描いた、シンプルだけど馬力ある傑作

スピルバーグとヤン･デ･ボンの豪華な組合せが意外な位、
一見すると華がない作品で、
素直に表現すれば、
｢竜巻の進行方向に回り込む実測調査しかないなんて、
何処まで危険に向こう見ずな科学者達なんだ｣としか思えない映画だ。
ストーム･チェイサーとはよく言ったもので、
ドローンも自動運転車も無い時代にあっては観測するには此れしかないのだから、
彼等の覚悟とプロ魂には畏れ入る。
彼らなくして竜巻の予測モデルはこの世に無かったのだから、
単に面白さだけで評価したのでは申し訳ない。

それが名声の為か、
親への誓いの為かはこの際、
関係無い。
竜巻の発生･移動メカニズムを丸裸にする事だけに全てを懸けた科学者達、
その活動だけを追ったシンプルな作風だけに、
臆面もなく迫力のCGを主役に置いた潔さに感心する。

役者の演技は素朴なもので、
ストーリーも簡潔で直線的だが、
竜巻の動きを予測しながらチームで爆走し、
遂には目の前に捉える緊迫感はこれ迄にない光景で、
画面を覆う灰色の悪魔の映像は圧倒的だ。

私はこう言う泥臭い実話ベースのシナリオに弱いので、
忘れられない作品になっている。
荒削りだけど真実の馬力のある作品は、
一味違った映画の存在価値を認めさせてくれる傑作だ。

最後に一昨年に急逝したビル･パクストンの憎めない市民的な演技がもう観られないのがとても残念だ。