男性も読むべき

これは、
大企業の女性取締役として日本の企業社会の先端を走る内永さんの著書だが、
男性会社員にも、
広く読まれるべきものである。


その理由は、
何よりも、
目標の設定と達成の方法、
リーダーシップの条件、
困難な状況の乗り切り方など、
内永さんが長年かけて少しずつ学び実践してこられた、
男女にかかわらず有益なことがらが、
内永さんご自身の言葉で率直に語られているからである。
現在の達成された結果から、
順風満帆であったかに思われる内永さんにも、
仕事に馴染めず、
ひどいうつ病に悩まされた時期があったというのは驚きであった。


そして、
もうひとつの理由は、
内永さんが女性であるがゆえに直面した理不尽な問題を、
広く男性の側も共有しないと、
真の解決は望めないからである。


もっとも、
内永さんの姿勢は、
決して女性社員に甘いものではない。
それは、
同じ成果に対しては男女の区別なく同じ評価をすべきだ、
という、
いわば徹底した成果主義である。
女性の残業が許されなかった時代に、
トイレに隠れてまで残業したというエピソードも、
男性と同じ成果を出したいという思いからだったようだ。


内永さんは、
出産や育児という女性特有の事情も、
家庭のために仕事はそこそこにするという生き方も、
否定はしない。
しかし、
そのために、
女性は男性と同じ成果をあげなくても同じような評価をしてほしい、
といった主張には与しない。
仕事よりも家庭を優先しようとするならば、
仕事の評価が低いことは甘受しなければならない、
何かを得ようとすれば何かを犠牲にしなければならない、
ということは、
激しい競争社会を生き抜いてきた内永さんにとっては当然のことだろうが、
多くの女性社員にとって、
そして男性社員にとっても、
襟を正すべき厳しさがある。


そして、
その上で、
本書は、
周囲への感謝、
謙虚さに貫かれている。
それこそが、
本書から最も学ぶべきことのひとつのように思われる。