サザンこの20年の進化！

前回のベストアルバムから約20年。
曲調は「いくつになってもひたすら恋を」的な意味合いは変わらないが、
確実にサザンは進化を遂げた。
ヒット曲は前回より大幅に減ったが、
桑田佳祐の詩の世界は一層深まりを見せる。
最大のヒット曲「TSUNAMI」の詞は不倫を唄った曲だ。
津波は一瞬ですべての人と物を呑み込む。
押し寄せては返す。
出逢いのときめきと別れねばならない定め。
これを津波に例えるとは何と上手い表現か。
しかも不倫を「魔性の火」、
「鏡のような夢」、
「ガラスのような恋」で巧みに表現する。
まさにこの表現は叶わぬ不倫の恋以外にはあり得ない。
2枚目の「蛍」の歌詞も感動的だ。
百田尚樹の『永遠の０』の原作を映画化した作品のエンディング曲である。
特攻隊に志願して死んでいった男の遺された家族への想いを「涙見せぬように笑顔でさよならを」と綴る歌詞には涙が出る。
最後の「夢溢る世の中であれと祈る」という歌詞は若い頃の桑田佳祐では絶対に書けなかったであろう。
何と素晴らしい歌詞に出会えるアルバムであることか。
ヒットするか否かがすべてではない。
「ピースとハイライト」では、
「教科書は現代史をやる前に時間切れ。
そこが一番知りたいのに何でそうなっちゃうの？」の歌詞には、
歴史教育者には身に詰まされる思いがすることであろう。
そしてこの曲最大のメッセージは「希望の苗を植えていこうよ。
地上に愛を育てようよ」と呼びかける。
桑田佳祐の人類愛と世界平和へのメッセージである。
ここまで深まりを見せるのは桑田佳祐の人生観の深化があったからである。
永久保存盤としてファンはもとよりサザンを知らない若い人にも聴いて欲しいアルバムだ。