本文とマンガの乖離が惜しい

「コミックエッセイ」と銘打たれている通り、
本書は数学にまつわるエッセイ(雑学や簡単な解説)と2ページのマンガが交互に載っています。

本文とイラスト(マンガ)は、
ともに同じひとりの筆者の手によるものだそうです。

ただしマンガでそれぞれの数学に関するトピックを解説するといった類の本ではないので、
その点は注意が必要でしょう。

本書に掲載されているマンガはいわゆる「学習マンガ」のように、
文章で語られている内容を補完するためのマンガではなく、
それぞれの数学トピックをお題にしたショートストーリーばかりです。

そのため、
お堅いイメージの数学本をやわらかく見せる助けにこそなっているかもしれませんが、
それによって数学への理解が深まるわけではありません。

更に、
本文中にもたびたび図表やイラストが挿入されるので、
本書におけるマンガの意義が一層に薄いものとなっています。


また、
本書の冒頭に「数学得意な方は立ち入り禁止」という記述があります。

確かに扱われているものは数学に関する書籍としてはごく基本的なトピックばかりなので、
詳しい人間にとっては物足りないでしょう。

しかし数学について全く素養がない人間が読んで楽しめるかというと、
それには疑問符を付けざるをえません。

前述したとおり、
一般的な学習マンガでは学習の補助となるマンガが、
単なる独立した数学ショートショートになっていて、
数学理解の助けにはならないからです。


ただし本文の質は決して低いわけではないので、
ある程度数学に興味がある人が読む数学エッセイとしては及第点だと思います。

また、
あらかじめそれぞれのトピックについて知識がある場合は、
それぞれのネタについての漫画にクスリとできるかもしれません。