歴史は越えられるのか?
新書ながら筆者の韓国史への熱い思いが伝わってくるものだった。
教科書的記述ではあるが、
そこからはハッキリと進歩派へのシンパシーが感じ取れる。
ただ光州事件あたりまでは具体的な顔として伝わってくるのだが現在に近づいてくる頃になると勢いが落ちている気がする。
これは端的にインターネット/グローバル化以後の政治・文化が反映してのことかもしれないが、
あっさりした感じに受け取ってしまった。
あと進歩派/運動圏へのシンパシーがあるのは構わないが、
保守派ないしは制度圏への記述や分析が薄いのはいいのだろうか。
韓国史自体が運動圏からの突き上げ、
乗り越え、
反抗でもって突き進んできたというのは分かりやすいし、
光州事件やその後の歴史検証を見るにあたりプラスの面が大きいのは分かるのだが、
その分析だけだとグローバル化以後世界中で起きている階層分化や流動化に対応できない気がする。
盧武鉉以降のところで触れてはいるが、
労働/経済問題に直接民主主義だけで当たるのは無理があるだろう。
この本があくまでも民衆を映すという目的で書かれるならば仕方のないことかもしれないが、
そこから一歩踏み込んで書かれていればなお良かった。
ただ一点ニューライトの分析だが、
確かに日本の植民地支配については正当化出来ない。
ただそうなると保守派との差異とは何なのかを説得的に示せているかが曖昧だ。
朴正煕は独裁者で虐殺もしたが自国人だから許せる、
朝鮮総督府は外国人だから許せない。
端的に言うとこうなるのかもしれないが、
無論戦後の親日派や財界人らは日帝の残滓に預かった人たちである。
軍人は言わずもがなだ。
現代まで続く財閥などは典型だろう。
日韓基本条約やベトナム戦争を通じて成長したというならまさに帝国主義の申し子だろう。
そこはこれからの課題なのかもしれないが、
全体を通して最初に触れた日本帝国主義批判がどう現代の韓国人にとってリアルな意味を持っているかをもっとハッキリと書いて欲しかった。
現代韓国人にそこへの違和感がないならないで構わないのだが、
記述が薄いのがもどかしく思った。
歴史を乗り越えるとは、
歴史に向き合っていくことだとこの本から受け止めた。
本当に乗り越えられるかは分からないが、
当事者である日本人に向けて書かれた真摯なものだった。
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