ある預言者が思想した戦争と平和
「矢内原の主張には、
現世内的な批判(社会思想・政治思想)と終末論的な批判(宗教思想)というふたつの異なる水準の議論が絡み合っている。
そのことが、
矢内原の議論をときにわかりにくいものにしている。
」
徹底した平和主義を説いた良心的知識人にして、
内村鑑三に師事した無教会キリスト教の伝道者、
矢内原忠雄。
彼のこの二つの横顔は、
割合によく知られているでしょう。
しかし、
その両側面の交差するところで発せられる彼の思想を、
ここまで丁寧に分析的に読み解いた著作は、
これまで無かったのではないでしょうか。
無教会キリスト教の展開について詳細に研究した上で、
さらに近代日本のナショナリズムの構造に切り込む作業を行ってきた著者だからこそなしえた、
貴重な仕事であるように思います。
手に取りやすい新書で読めるのが幸いです。
矢内原の生涯をほぼ時系列にそって検討していく本書ですが、
そのハイライトは間違いなく、
戦時下における彼の思想について考察した第4章であると思われます。
無教会の理念の時局的な再解釈として、
天皇とその下でまとまる臣民による「キリスト教全体主義」を構想した当時の矢内原の思想には、
同時代の過激な国体論者のナショナリズムとも、
紙一重のところがありました。
しかし、
その背景には、
究極的には国家を超えていく強烈なキリスト教信仰や終末論の切迫感があり、
これが通常の愛国主義者たちとはまるで違う、
彼のほかに類を見ない非戦論を成り立たせていたということです。
こうした矢内原の実に特異な思想は、
戦後になるとまた独特の屈折を見せていきます(第5章)。
そうした議論の背景は、
なかなかに込み入っているのですが、
本書では、
かなりわかりやすく整理されているように思います。
矢内原のように、
確たる宗教的なバックグラウンドのある知識人の政治思想は、
当たり前ですが、
宗教の論理に通じていないと正確には理解できません。
しかしながら、
今日の政治思想の研究者で、
宗教の論理をきちんと把握している人は、
あまり多くはないでしょう。
そんななか、
本書の著者がものしている、
ある人物の思想の根底にある宗教性と、
表面にあらわれる政治的主張との相関性を重視した論述からは、
目が覚めるような見識を得ることできます。
その他の感想
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顔が違う。。。
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残念な感じです。
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