献身的な強い女性の姿に感動。

　「竜の夜明け」と同様、
パーンの竜騎士シリーズの外伝です。
時代は「竜の夜明け」の描くこの世界の始まりからはかなり後、
本編では伝説として謡われているぐらいの昔、
という位置にあります。
「竜の夜明け」で書かれていた高度な文明は既に忘れ去られ、
竜と竜騎士が災害を防ぐ集団としての制度が確立した世界です。

　本編の時代では伝説として謡われるようになっていた「モレタの飛翔」。
流行り病を治す薬を配布するために竜と飛び、
その途中で永久に消えてしまった女性モレタのお話です。
竜とその乗り手はどちらかが死んだりすると生きられないほどのショックを受けます。
その悲しみのなかで踏みとどまって卵の成長を見届ける一人と一匹には、
もしかすると献身的に働いたモレタよりも感動するかもしれません。
登場人物は、
相変わらず能力はあっても自己中心的な男性陣、
しっかりしているか無力かの両極端の女性陣、
と著者の色分けははっきりしています。

　導入部の市の賑やかさ、
明るさと、
流行病との闘いの壮絶さ、
暗さもはっきりしていて、
ぐいぐいと最後まで読ませてしまう力のある一巻。

　流行病の原因が外伝「竜の夜明け」で出てきた生物か？と思わせたり、
「失われかけた文明の知識」で治療法を工夫することなど、
シリーズの他の話とちゃんと繋がってSFファンタジーしているので、
やっぱりこの外伝も読んで欲しいと思います。