歴史書というより歴史小説

歴史書というより歴史小説

兵器や戦略と言った軍事領域で独特の人気を持つ兵頭二十八さんの米国通史の第1巻です。


後に8巻、
全9巻を予定しているようなので、
イメージとしては塩野七生さんの「ローマ人の物語」の米国版というところでしょうか。


「ローマ人」との違いは、
軍事技術や戦術の解説が充実していること、
独立"戦争"における国内・国際世論のコントロールの重要性が鮮明に描かれていることです。

「ローマ人」のスタイルは、
各巻に一応の主人公を設定し、
その人物にスポットを当ててドラマを作る形式ですが、
本書は、
少し引いた視点で「戦争」の巧拙を解説しています。

読めば、
その時代の技術が、
戦争の進め方に、
どのような影響を与えるのかがよく分かります。

また、
戦争が単に武力の優劣で決まるわけではないこともよく分かるでしょう。

(精神論ではなく、
敵国や第三国の世論を味方にすることの重要性です)

私が本書を手に取った理由は、
日本では意外と読みやすいアメリカ通史の本がないことがあります。

従来の「メイフラワー号が」とか偉人伝の「ワシントン」「リンカーン」といった断片的な情報だけでなく、
米国通史を勉強する良いきっかけになるのではないでしょうか。


せっかくの良書ですので、
このクォリティを保ちながら現代まで続いて欲しいところです。
全9巻という長大なプランだけに、
挫折無く続くことを祈ります。