キング・オブ・ポップの貫禄

この作品集は漫画家の江口寿史さんが1977年のデビューから現在までの38年の活動期間中に描いたイラストレーションを好いとこ取りで収めた豪華版です。

段ボールの外箱の中身は二冊に分かれていて一冊目はオール・ワークス、
つまりほぼカラー作品で占められた作品集です。
日本のポップアート的なイラストレーションを代表する彼の、
今は亡きパントーンを使った総天然色の作品はその公開以来どれも素晴らしい出来映えで、
彼を代表する作品群が続きます。
そしてパントーンからフォトショップへの短い移行期にマーカー塗りで写真のイラスト化を行っていた、
一般的にはあまり知られていない手塗りの作品も掲載されています。
この一冊目のハイライトの一つは江口さんが幼少時代を過ごした水俣市に2009年から毎年作成している観光ポスター五点になると思います。
どの作品にも言えることですが、
何気ない一枚のイラストでも髪の毛や洋服の皺、
女性の輪郭線や素材の質感など本当に美しく目を見張るものがあります。
時代のエッセンスを汲み取る能力に著しく長けている証拠に、
女性の顔立ちもその当時に注目を集めたタレントを思い出させるのと同時に描いた当時のファッションの流行までそのイラストにパッケージされているので、
大袈裟かも知れませんが恐らくは後世になって普通のイラスト画以上の普遍性を持った作品群として江戸時代の浮世絵のように正統的な風俗画として評価されていくように感じました。