楽しく読める海軍食物語

　海軍での料理、
献立の実態など海軍食の食文化について、
海軍料理研究家の
著者が解説したもの。
海軍ができた明治期から戦後にいたるまで、
海軍の食事
がどのようなものであったのか、
具体的な献立、
レシピも多数紹介している。

　残念ながら、
著者自らがたびたび述べているように、
話が脱線しやすい。
図版
も、
本筋とはほとんど関係のないものが掲載されていたりする。
そういった散漫さ
が、
本書の内容を焦点の定まらないものにしてしまっているように感じる。
結果、

いくつか提示された興味深いテーマもそれ以上掘り下げられることなく、
そのまま
放置されているのは残念。

　ただ、
逆に言うとそういった著者の移り気のおかげで、
本書の中にはかなり広
範な意味で、
海軍の食にまつわる話が紹介されている。
上官の食べる料理に対
する下士官の憧れの気持ちや、
また、
陸軍と海軍での料理の違い、
軍隊だけで
なく、
同時代の一般的な日本社会における食事の様子にも考察をめぐらせてい
る。
ひよっとしたら、
いろいろな種類の話を載せることを意識して副題に「アラ
カルト」とつけたのかもしれない。

　研究家というだけあって、
さまざまな文献を紹介してくれているので、
興味が
沸いた人はこの本からほかの本に手を広げることもできると思う。
さらに存命の
人物や関係者から聞いたという話も豊富。
なによりも、
この著者は自衛隊に所属
し、
実際に護衛艦で食事をつくっており、
そのことを基にした話はやはり興味深
い。
料理を扱っているためか――いちおう軍事を扱った本でありながらも――全
体に雰囲気が明るく、
楽しく読めるのもうれしい。