刻（とき）の旅人、柳沢正人ファンにとっては待望の一冊

刻（とき）の旅人、
柳沢正人の初の画集である。
その紹介文には、
「悠久の時と空間の壮大な物語を繊細な筆触と独自の大胆な構図で新たな日本画表現の世界を築いた俊英の日本画家」とあるが、
日本画と聞いて花鳥風月を思い浮かべる諸氏には当て外れとなる作品の連続かもしれない。

柳沢正人は、
昭和30年長野県生まれ、
東京芸大で日本画を学んだのち、
イタリアで研修の機会を得、
その地でローマ、
ギリシア、
ひいてはエジプト文明までが、
現在まで綿々と連なっていることに深く感動したという。
その後、
”刻(とき)”を大きなテーマに据えて、
都市の風景や建物などをモチーフに、
空間や時間の広がりを画面の中に表現し続けている。
日本画の画材と手法にこだわったイタリアの風景画は同国内でも高く評価されているという。
構図の斬新さが言われるが、
柳沢は逆光を用いて描写するという技法を取り入れているため、
その透明感に深い印象が残る。
本書には、
代表作を含めて95点の作品が掲載されている。
作風の変遷も興味深く、
柳沢ファンにとっては待望の一冊である。