まだ起承転結の「承」といったところですが…
夏目、
冬児、
秋乃、
天馬、
京子、
鈴鹿が天海のもとに集い、
これからの計画を立てていた。
そこに陰陽庁の発表が知らされる。
それは「北辰王」こと土御門春虎が霊災テロを予告してきたというもの。
彼らはその予告が陰陽庁による自作自演であり、
敵対勢力への誘いでもあると気づくが…。


本巻単体で見ると、
前巻に引き続き伏線のための巻といった印象で、
物足りないものがありました。
主要キャラが散らばってしまった以上ある程度は群像劇的になるのは仕方がないのですが、
第二部の主人公であるはずの夏目の存在感が薄いのも気になります。
終わり方も次巻へと引っ張るような締め方で、
オチもありません。

それでも相変わらずの完成度と密度はさすがでした。
伏線の張り方もうまいのですが、
何より、
前巻までのキャラや事件の経緯の説明の仕方が自然で無理がありません。
シリーズものを書くうえでの読者に対する配慮がさほど目立たずになされていることに、
作者の力量がうかがえます。


また、
本巻ではさらに物語に緊迫感や暗さが増しています。
地下に潜っていた大友が夏目たちを来訪し再開を喜ぶ、
といったエピソードのなかにも苦味を感じさせる要素があります。
その分、
鈴鹿と秋乃をめぐるやりとりのなかに「日常」の感覚を織り込ませている描写があって、
ホッとしました。
そうした箇所に鈴鹿の成長を感じさせる一幕もあります。
ちょっとした出来事でドラマ要素を盛り込むことができるのは、
作者のエピソード作りのうまさがあってのものでしょう。


本巻は第二部としてはまだ起承転結の「承」の部分。
今から次巻が待ち遠しいです。
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