幕末・明治維新の歴史を“勝者”（薩摩・長州）ではない視点から見直す.

歴史が相対立し争う幾つかの勢力・民族との戦争に依って作られている場合、
往々にして“勝者側”の語る歴史と“敗者側”の語る歴史は相反し、
真逆の局面・様相を観せるものである。
端的には中国共産党の主張する近現代史と我々の観る近現代史の齟齬・乖離があろう。
本書はかかる“勝者”と“敗者”の歴史観及び歴史的評価の齟齬・乖離を前提理解として、
幕末から明治初期（戊辰戦争・西南戦争終結）までの激動の「明治維新」の歴史ーー明治新政府の中心となった長州・薩摩藩等の“勝者”が造り上げた従来の歴史観及びこれを「流布」した司馬遼太郎の小説史観（4~5頁）ーーについて、
“敗者”側にも配慮して（と言うより中立的に）実証的に考察・評価するものと言って良いだろう。
特に監修者が「巻頭インタビュー」で本書の趣旨・動機・意義について述べているが、
「明治維新を見直す行為は、
新たなパラダイムを築いていくために必要な作業」であると位置付け（3頁）、
加えて「幕末以後の歴史を歪めて記述したのは、
勝った薩長勢力であるのは間違いないが、
その後の歴史の見方を大きく左右した人物に……司馬遼太郎」がいると手厳しい（4~5頁）。
テレビ・ドラマに依る戦国時代や幕末期における歴史的ヒーローなどに関する潤色・脚色を論難するつもりはないが、
かかる脚色・潤色が（史実であるかの如く）独り歩きをすると歴史を見誤ることは監修者の指摘するところであろう（5~6頁）。