考える力

私はスポーツ経験のまったくない人間ですが、

大山加奈、
荒木絵里香、
木村沙織というスケールの大きな選手を立て続けに輩出した
小川監督の哲学に興味があり本書を読みました。


この著書で私が一番興味を惹かれたのは以下の内容についてです。


「リズムよく大きな声で揃って返事をする。
」
強豪校の部活指導、
従業員研修、
軍隊の訓練などでよく目にする光景ですが、

小川監督は、
この光景に異を唱えます。


「全員で声を揃えてハイという場合、
声をそろえるタイミングに意識がいってしまう。

納得できないのなら、
納得できないという顔をして欲しい。

本当にわかったときはうなずくだけで十分。
というのです。
」

こういった集団で動作を同調させる目的は、
一人ひとりが勝手な思考をする事なく
指導者の方針に条件反射的に従う事を目的としています。

このような軍隊式の指導方法は、
集団の統率力を上げ、
チーム力のアップに繋がる面もありますが、

選手一人ひとりの考える力を奪い、
トリガーとなる指導者がいなければ、

力を発揮できない選手を育ててしまう恐れがあります。


自分たちで考え、
自分たちで強くなれる自立した力を身につけるための指導。

そして陸上選手並みの徹底したフィジカルトレーニングと数値化。


高校生の選手達に、
全日本選手の高校時代の記録を伝え、

自分の現在の立ち位置を確認させたり、
モチベーションのアップを促したりもしているようです。


全日本で活躍できるレベルの選手を育てる事を使命と考えた小川監督。

彼の元を離れた後も、
熾烈な競争や環境の変化を乗り越える必要がある選手に対して、

第一に伝えるべき事が「考える力」だったのでしょう。


そしてあらゆる技術の基礎となるフィジカルトレーニングの徹底。


このような指導の結果、
臨機応変に試合の流れに対応できる木村沙織や
チームが追い込まれる程、
力を発揮する荒木キャプテンを生み出したのでしょう。