表紙を見るだけで胸に迫るものがあります

表紙に小さく映っている３人の歩く姿は、
彼らの最後の足跡です。
偶然他の登山者がカメラに収めたものです。


実はこの本には、
自分の父親も捜索隊に加わった一人として名前が載っています。

だから他人事には思えず、
臨場感と緊張感を持って何度も読みました。

父も若い頃は幾度となく冬山で死にかけたことがあるらしく、
出発前に祖母は毎回「これで最後だ」という覚悟をして送り出していたそうです。

結婚し私たちが産まれてからは冬山登山は控えたそうで、
今でも元気な父親にただただ感謝と尊敬の念を持つばかりです。

もちろん、
子供の頃からよく家族登山をしてくれたおかげで、
私も山の魅力に憑りつかれている一人です。


言い古された言葉ですが、
無事に下山してこその登山です。

例え標高の低い夏山だとしても、
私は最後の一歩まで噛み締めるように歩んでいます。

この本で改めて、
山と人との間の越えられない壁を学びました。

山を知り尽くすことはできません。
だから山岳人は山岳人に学ぶのだと思います。


「好きな山で逝けたんだから」というご遺族の、
自分に言い聞かせるような言葉は重みがあります。
きっと私でもそう思わずにはいられないでしょう。
それ以外に気持のやり場がないのですから。

泉さんの書き方に温もりがあるのでいくらか救われる思いですが、
それでも小説ではない、
忠実な記録だからこそ、
圧倒的な寂寥を感じます。

表紙の写真が、
悲しくて仕方ありません。