レクター博士の起源

好き嫌いが分かれるものだと思う。


一級のサイコ・サスペンスを求めるのなら、
今回の作品はその欲求を満たしてくれないだろう。


この作品は前三作と違い、
レクター博士の人生を少年時代から切々と描くものである。


彼に何が起こり、
どう生きてきてのかが書かれているのだ。


雰囲気としては「レッド・ドラゴン」で描かれるダラハイドの人生のパートに近いものを感じる。


また、
前作「ハンニバル」で描かれた妹のエピソードが全体を通して深く根を下ろしており、
エンターテイメント性はあるものの重いストーリーが展開される。


レクター博士の抱く愛や復讐心、
彼を取り巻くキャラクターのあり様など、
ハンニバル・レクターというキャラクターを通して、
善と悪、
光と影が鮮烈に描かれていると感じた。


読者は作中に、
多少なりとも怪物の正体を垣間見られるだろう。


作者の“静”の描き方には、
感銘を受けた。


レクター博士のファンで彼について知りたいという思いがるのならば、
気に入る作品だと思う。