先進国に生きる者は、目を逸らせない。

奴隷になる前の彼と１４年後の彼とをとっくりと見比べてほしい。

キウェテル・イジョフォーの卓抜な演技だとは分かっていても、
尊厳を奪われた人間の顔がどのように変化するのか、

深い悲しみと怒りを持って実感することができるだろう。


奴隷主たちは、
日々神の名を唱え奴隷の呻きの上に胡坐をかいて、
美食と美飾に現を抜かす。

その姿は、
薄汚いを通り越して、
蛆虫のようなどんな生物よりもかく醜い。

しかし、
この映画で紡がれる世界は、
いまだ過去の遺物とするには、
十分解決されているとは言えず、

いまだに奴隷労働に従事している人間は、
約3580万人（グローバル・スレイバリー・インデックス2014を検索せよ）だと推計されている。

先進国において美食と美飾を享受する我々は、
到底無関係と頬かむりなどできそうにもなく、

どちらかというと奴隷主側に近い立ち位置にいることを思って愕然とするわけだ。


いや、
本当はそんなこと等はとうにわかっていたはずであり、
それでもこの不安を催す映画を見たのは、

虐げられる人に対して鈍くなる一方の感性に、
一鞭あてたいと思ったからかもしれない。


一般受けする映画ではないだけに、
ブラピやファスベンダー等の人気俳優を配せるところは、

欧米の映画文化の深さを感じさせられる面があった。


軽い気持ちで観るには重たすぎるテーマなので、
一人で、
じっくりと視聴できるときに観ておきたい。