素敵で心躍る「物語」

　編集が雑なのが残念。
誤字脱字もしかりだが、
インタヴューのまとめ方にも難あり（特にどのパートとはあえて言わないが）。
勿体ない。


　とはいえ、
内容自体は、
私のようなプロレスファンには非常に面白い。
武藤敬司や蝶野正洋のトークはまさしく「ガチンコ」で、
例えばグレート・ムタのｎＷｏ加入が２人の相異なるどのような思惑で描かれていったかの「種明かし」などスリリングで、
推理小説を読むような醍醐味さえ感じる。
武藤がゴールから逆算していったと説明する一方、
蝶野は予定通りになど進まないと捉えているのは意外だった。

　それに加えて、
橋本真也のパートは妻かずみさんのインタヴューを基にしているが、
トンパチな橋本の思い出話は爆笑必至。
これには、
かずみさんの大らかな人柄もあるのだと思う。
もちろん、
正直に怒りをぶつけている局面もある。
しかし、
何と素敵な奥さんなのだろう。

　本書を読む限り、
最後の武藤敬司vs蝶野正洋は、
もうなさそうだ。
そのことに、
泣けてくる。
いつの日か、
リング上での、
２人の邂逅はないものか。

　とはいえ、
武藤は膝の手術をキャンセルしてまで、
いま、
WRESTILE-1の現役王者として踏ん張っている。
彼らのプロレス人生を思えば、
これは驚異的なことだ。
闘魂三銃士の活躍を、
最後の最後まで見届けたい。
これほど素敵で心躍る「物語」を、
ずっと紡いできてくれた３人なのだから。