久々に面白いと感じた組織神学書

批判も称賛も多い「ふしぎなキリスト教」をベースに、
サラリーマンから御受難会司祭に転じた日本では異色の神父、
来住師が神学の初歩を語っていくという一冊である。
組織神学（教義学）の教科書に近い内容だと思う。
もともと来住師の本が好きだという個人的事情を差し引いても、
久しぶりに読んで面白い本だった。

来住師はカトリック神父だが、
カトリック的見解に偏らず、
きちんと改革派やルター派、
正教会の組織神学書も読み込んだ上で、
「ふしぎなキリスト教」のここは違うんじゃないか？、
こういう神学的見解もあるぞ（特に十字架の神学論についての記述は、
私も思いつかない見解が挙げられており、
目からウロコが落ちた）というのを、
落ち着いて論じており、
面白かったし勉強にもなった。

「ふしぎなキリスト教」著者の橋爪師が、
自分の属する教会（ルター派だと聞いたことがあるが）のバックボーンを表に出さないまま、
こういう本を書いてしまったことが、
毀誉褒貶の原因じゃないかという指摘は、
もっともだと思った。

おしむらくは、
この手の本の平均価格より千円ほど高いことだろう。
でも、
「ふしぎなキリスト教」をめぐる状況では中立な春秋社からの出版であるし、
仕方ないのかな。
教文館ならもっと高かったろうし、
キリスト新聞社だと中立性に疑問があるし。