心臓弁膜症と言われたらとりあえず一読を

これまで弁膜症に絞って書かれた一般向けの本は一冊もなく、
詳しく知ろうとすれば
専門書によるしかなかった。
心臓病といっても数の多い虚血性心疾患や不整脈とは
性質の異なる病だけに、
患者の立場で解説してくれる書籍が刊行されたのは有難い
ことである。
心臓外科医として多くの症例を扱ってきた著者が、
丁寧に概説する一冊。


著者は「弁の手術は適切なタイミングで行えばきわめて安全」と述べ、
心臓の壁が悪化
する前の手術が重要だとする。
いったん痛んだ壁（心筋）は修復が困難だからである。

早い手術によって元気になった症例や体験談をいくつも掲載している。
患者にとって
厄介なのが人工弁の選択の問題だが、
その辺の事情にも触れて、
患者が納得のいく
選択ができるよう情報を提供している。
何でも著者は「生体弁派」とされているらしいが、

それは本意ではなく、
長所短所を知ってもらい、
人生に合った選択を希望しているだけ
とのこと。
近年は弁膜症の患者が増えているらしく、
新たに患者となった人のために
基礎から説明しているし、
合併症に多い不整脈や術後の生活、
薬とのつき合い方にも
触れている。
弁膜症は自分は健康だと信じていた人がいきなり宣告されることが多い
病気だ。
もし心臓弁の異常を言われたら、
慌てずに本書を一読しておきたいものである。