救いのない中で

（以下1999年に書いたもの）
この時代すべてが相対的で条件付きであり、
何が良いことかもわからなくなっている。
そんな終わらない日常にたえられない良心的で純粋な若者たちは、
ハルマゲドンを待望したり絶対的善をこれと断言してくれるものを求めたり（オウムへの入信）、
神戸の廃墟に何かあると思ってみたり、
あるいは自殺したいと思う。
しかし、
やはり何が良いことかなんてこの時代、
相対的でしかありえない。
絶対的な善をもとめても、
ない。
コミュニケーションスキルを身につけて、
相対性をそのまま生きよう。
終わりなき日常を生きよう。
オウム事件の社会学的分析、
および、
「相対性をそのまま生きよう」とのメッセージを兼ね備えた著作。


自然科学でさえ相対的な部分があることを考えれば、
善もなにもかも相対性の中にしかないというのは私にとって自然な認識であったし、
事実として私は絶対を指示してくれる他者を求めることはない。
あるがままの相対的な日常を生きている。
だから相対的日常を生きろという宮台のメッセージは当たり前過ぎて少なくとも私相手にはなんの効果もない。
理解はできるが、
なぜこのメッセージが誰かに対して有効なメッセージでありうるのかが私には理解できない。
宮台のメッセージが胸に突き刺さる人々の心性がわからない。
善が分らないと困るから絶対を志向するという道筋は十分わかるけれど、
なぜ彼らの行動（たとえばオウムに入信するなど）のようでなければならないのかわからない。


勉強に時間をかけてきたし、
純粋で良心的という意味では、
オウムの信者に私は近い条件にあったと思う。
だけれども、
事件を起こす前であってもオウム的なものに全く同情できなかったし、
近づこうとも思わなかった。
私ももちろん、
相対性に苦しい思いをすることはあるし、
絶対的な何ものかを目指したくなることもあるが、
悩みの中でも冷徹に思考してしまう癖が身についているからだろうか彼らのような短絡な行動に移らないでいられたということかもしれない。
短絡に行動しない代わりに、
考えが肥大するあまり、
ぐるぐると一人悩み苦しむことは圧倒的に多いんだけど。
救いのない中で苦しみ抜くのも人生だろう。
私はどちらかというとそれを選びたい。