ちょうど良い軽さ

ウェス・アンダーソンの作品は四本くらい見ているのだが、
私は個人的にこの作品がいちばん見やすくて楽しかった。

劇場で観たときも観客席からは笑いが漏れていた。
くすっとくる。


この監督の作品は、
「ユーモアがあり映像も美しいがちょっとくどくてなんか疲れる」という印象を持っていた。

喩えるなら、
カラフルなバタークリームのケーキのような感じだと思う。

ユーモアと、
凝りに凝った映像の底で扱っているテーマや感情が、
案外真摯だったり重たかったりした。

それが映像と合わさって、
観終わったあと、
いつもなんともいえない疲労感を覚えた。


今回はミステリーということもあるのか、
随分軽くなってエンターテイメントに寄っている印象を受けた。

そのエンターテイメント性は、
装飾的でポップな映像とぴったりマッチしていたと私は思う。

主人公達が天涯孤独で、
家族の影や閉塞的なコミュニティの気配がなかったのも軽さを手伝っていた理由かもしれない。

一気に見ることが出来たし、
面白かったし、
全然疲れなかった。

劇中に「MENDL’S」の「コーティザン・オ・ショコラ」というすごくかわいい小さなお菓子が出てくるのだが、

そのお菓子みたいに、
美味しく食べてもお腹にひびかなそうな感じ。
（お菓子の味は想像ですけれど…）
私にはそれがとても丁度良かった。


今度はDVDで映像の細部までゆっくり見てみようと思う。