処女の誘惑

日本のフェミニズムを代表する社会学者が、
漫画や広告や歌舞伎など多様な素材を取り上げながら、
その分析対象が
記号として表現している性的、
動物行動学的な意味を探求するものである。
露骨に過激で軽薄な言葉を駆使しながら、

明晰な論理で社会的な考察を重ねるスタイルにはかえって全く色気はないが、
特異な視点で「しぐさの文法」という
実践的なスキルを解析することに成功している、
と思う。
「どのみち人間は、
男や女であることから逃れられないの
だから、
あとはどうやって自分を演出するか。
」という開き直りともいえるような端的明快な問題意識の結晶である。


「個体が出会うところに『社会』があり、
個体を出会わせるものが『性』だとしたら、
性関係こそは、

社会関係のアルファであり、
オメガである。
…性的メッセージの中には、
個体距離を解除しあい、
しかも、

攻撃性を抑制しあうようなメカニズムが、
きわめて高度に発達している。
動物の行動の中でもっとも派手で
美しいプレゼンテーション…は、
性的ディスプレイである。
クジャクのオスの華やかな求愛ダンス（など）…、
…
『服従の儀礼化』が性的メッセージになりうるのは、
それが攻撃の放棄を意味しているからだ。
」（１１０〜１１１頁）

「ぶりっ子は、
必要があるときにはしたらいい。
それこそ、
からだをたて、
よこ、
ななめにくねらせて媚びを
売ってもいいだろう。
だが、
する必要のないときには、
毅然としていたい。
そのためにも、
ふだん自分が無意識に、

あるいは意識的にとっている数々のしぐさの意味を、
もう一度よく考えてみることだ。
そのうえで状況に合わせて
使いわければいいのだ。
それが、
背骨も心もまっすぐに保つための条件である。
」「…逃避姿勢も使いようによっては、

自分のほうから対象や世界を押しのけて遠ざけようとする、
攻撃的、
積極的なものになるのだ。
」（１２７頁、
１６０頁）

「…強くなった女たちが、
…適度な性的メッセージを利用するという手段がある。
…キャリアウーマンたちは、

もはや男に対して、
しりごみやはにかみのような服従のメッセージを送らない。
…そのかわり、
かえって外見上の