潔く優雅に老いるためのヒント

　「アンチエイジング」については否定的な態度からはじまっています。
老化という現象を拒絶しないことが大切なのです。
老化をとめるのは無理な話で、
往生際が悪いと無駄なエネルギーを使うことになります。
老化という経験をスピリチュアルな目覚めと成長の契機としてとらえることに、
意味があると説いています。
１章はアンチエイジングという考えの虚しさと、
老いの進化について科学的側面と哲学的側面から語ります。

　２章では、
潔く優雅に老いるためのヒントを（１）身体、
（２）精神、
（３）霊性に分けて語ります。
霊性というと、
テレビに登場するスピリチュアルカウンセリングを想像するかたもいるかもしれません。
ここの霊性は、
日本語ではうまく表現しづらいようです。
具体的にいうと、
呼吸法であったり、
自然に接することであったり、
花を愛でる、
音楽を聴く、
芸術に親しむ、
奉仕活動を行うという「自然や人との絆を深める活動」が、
スピリチュアルにあたるようです。

　巻末には、
まとめとして、
「ヘルシーエイジングのための１２か条」を提案しています。
先にここを読むと、
全体を理解しやすいでしょう。
買おうかどうか迷っている方は、
この１２か条だけを立ち読みするだけで、
価値が判断できるでしょう。

　アンドルー・ワイル博士の活躍はすさまじく、
２００８年、
アメリカで行われた「ヘルスショー」では、
新聞に「あまりにワイル博士とコラボレーションした製品が多い」と書かれるほどでした。
難しい内容を分かりやすく書くコミュニケーション技術が人気だとは思います。
が、
それだけではありません。
文章から伝わる温かい人柄は、
読んでいて安らぎさえ感じます。
知的好奇心を満たしつつ、
癒しも得られるという、
すばらしい本です。