私と悪魔の100の問答 Questions & Answers of Me & Devil in 100 (100周年書き下ろし) の感想

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タイトル私と悪魔の100の問答 Questions & Answers of Me & Devil in 100 (100周年書き下ろし)
発売日販売日未定
製作者上遠野 浩平
販売元講談社
JANコード9784062165488
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » SF・ホラー・ファンタジー

購入者の感想

主人公の『クズっち』は人並みの生活を送る
平凡な女子高生である、と自身は認識している。

しかし、その生活がトラブルで崩れ去った時に
自分が生きていた社会という名の『世界』と闘う事になってしまう。

更に厄介な事に『ハズレ君』なる人形を
操り、クズっちの生きていた世界をつつき回す
シャーマン・シンプルハートだか、
イェンセン・イェーガーだかが出てきて、
更に混乱させていく……。

ハンナ・アレントは悪を『陳腐』である、
と書いたがこの作品を読むと
正義、正しさというものも同じく陳腐なのではないかという疑いが生じる。

登場人物の滝口ミランダなる人物は
ハズレ君を邪悪、と決めつけ、自らは
正義としている。
実に知的に怠惰である。
自己の正義に対する批判が無い。

世の中、そんなに簡単に分かれてはいない。
世界は色んな点で矛盾していたり、歪んでいたりしている。それ自体は悪ではない。

それから、眼を逸らすことが悪であり、
知的に怠惰なのである。
面倒でも、一人一人が考えていかなければ、
世の中は良くなる訳がない。

現在の社会は『専門化』が進み、
今、私が手にしているスマホだって、
操作のしかたは分かるが仕組みは分からない。
説明されても分からない。
便利な世界とはある部分が
闇に包まれている事を許容する世界でもある。

だからといって、今さら原始的な社会には
もう戻れない。それが正しいとも思えない。
ならば、せめて闇がある事は踏まえて
生きていかねばならないのではないか。

と、自説を語って、中途半端に終ることにする。この著者の作品のレヴューでは許されるだろう。

悪魔との問答なので、基本的に「当たり前だと思っていた価値観が崩れていく」感を味わうお話になります。
そのようなお話といえば、マーク・トウェインの「不思議な少年 (岩波文庫)」。山下和美の「不思議な少年」シリーズも、ここから触発されての作品だと思いますが、本作もこの流れを踏襲した、王道的な「悪魔との対話」ものになります。

で、本作。何と言ってもこの「悪魔との対話」ものの王道を踏襲していて、なおかつ「ズルをしていない」事が最大の魅力です。「悪魔との対話」ものは入り口は楽なのですが、ちゃんと話を続ける/ネタを考え続けるのが難しいジャンルで、話の途中でネタをぶん投げたり、天使を呼び出して根拠のない良識論に回帰してしまったりと、ガッカリすることがすごく多い。
本作は最後まで常識に牙を剥いており、その点、安心です。

特に十代の人達向け。あなたの持っている世間に対するイライラの一部がはっきりするでしょう。答までは出ませんけどね。

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講談社から発売された上遠野 浩平の私と悪魔の100の問答 Questions & Answers of Me & Devil in 100 (100周年書き下ろし)(JAN:9784062165488)の感想と評価
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