やまがたすみこ CM WORKS うれしいね、すみちゃん の感想

　やまがたすみこさんのCMはこれまでもクリエイター毎のアルバムで聴くことができ、その度に懐かしかったり、新しい出会いがあったりしたのだが、このたびシンガーやまがたすみこでアルバムが出されたことはすみこファンにはとても大きな喜びに違いない。すみこさんのアルバム『エメラルド・シャワー』が1978年8月のリリースだから、初めの4曲以外はそのアルバム以降の作品。すみこファンの中には「風に吹かれていこう」に始まる初期作品をベストとする方もいるので、その方には好まれないこともあるかもしれないが、少なくとも『エメラルド・シャワー』を繰り返し聴いている私にとっては今年の好盤の1枚、それもかなり上位だ。
　収録されているのは1973年から2010年までの42作品。熱心なファンにはあきれられるかもしれないが、「えっ、この曲もそうだったの！」と気づく曲や、ローカルもので初めて聴いた曲もあって、1作品ごとにいろいろに楽しめた。例えば「あじのもと」の一言もあるし、通常の作品と同じような3分を超える作品も複数ある。さらに、おまけなのだそうだが、大丸百貨店の「愛のキャッチボール」が2012年8月の新録音で加わっている。吉川忠英さんのギターと井上鑑さんのアコーディオンでの作品、これが実にいい。なお、「愛のキャッチボール」のオリジナル(1977年版)は『AKIRA INOUE CM WORKS ON ASSOCIATES YEARS』(CDSOL-1222)で聴くことができるので、比べて聞くのも楽しい。全曲ではないが、ご本人の当時の思い出や、曲を示しての一緒に歌っているシンガーの紹介、曲のライター、歌詞など充実の説明や資料も嬉しい。
　時代時代に世相を反映し、登場しては消えてゆくCMがまとまった形で記録され残されることは、文化を考える側面からも貴重なこと。同時に、関係者のご努力によって、それぞれがとても楽しいものに仕上がっていて、聴いていると思わず顔がほころぶ。なかでも、このアルバムは楽しい。理屈抜きに楽しめるアルバムに仕上がっている。この企画と関係者のご努力に感謝しながら、もう一度、すみこワールドへ、いざ。