火薬のはなし (ブルーバックス) の感想

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本書のコンセプトは、このページの上の「商品の説明」にあるように、『火薬』について「爆発と燃焼は、どう違うのか。爆発の巨大なエネルギーの正体」を化学実証的に紐解きながら、「燃焼、錆び、生命の代謝、爆発……物質が酸素と結びつく酸化現象」などの幅広いトピックを展開して、「瞬間的に放出されるその膨大なエネルギー……火薬のすべてを分かりやすく解説」するものである。その解説は、著者の豊富なフィールドワークに依る高度な知見と、写真（モノクロ）、図表・イラスト、実験データ等に裏付けられた優れて実証的なものと言えるが、敢えて私見を言えば多少専門的高度な解説があり、予告なくテクニカル・タームが頻出するなど、文系人間の私では些か理解に覚束ないところもある。右傾向は第１・４章に顕著で、化学構造式はともかくとしても「（ビ）ラジカル」、「エンタルピー」、「ギブス自由エネルギー」、熱量計算式、「励起エネルギー」、「相転移」ほか、私などは逐一辞書やネットで調べたが、正直当該解説の理解は覚束ない。できれば係る専門性の高いテクニカル・タームは脚注・補注などのフォローが欲しい。そうでないと対象層が限られてしまうような気がする。著者は「はじめに」において、著者の専門領域の「後継者がいない」ことに嘆息しているが（5頁）、本書のようなユニークな書籍をより平易・一般化する意味でも、もう少し噛み砕いた解説が欲しいように思う。