ハケンアニメ! の感想

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参照データ

タイトルハケンアニメ!
発売日販売日未定
製作者辻村 深月
販売元マガジンハウス
JANコード9784838726905
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » た行の著者

購入者の感想

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主人公となるのは、アニメ業界に関わる3人の女性たちである。
有科香屋子(ありしなかやこ)は、王子監督のアニメ『運命戦線リデルライト』のプロデューサーを務める女性だ。王子監督の作品『光のヨスガ』のファンで、それがきっかけでアニメに係る仕事をするようになったのだ。しかし、王子が失踪してしまい、右往左往することとなる。

2人めは、アニメ監督の斉藤瞳という女性で、王子監督の「リデルライト」と同時期に放映される『サウンドバック 奏の石』を作っている。彼女は人間づきあいが上手くなく、関係者とギクシャクしてしまう。

3人目は、注目されているアニメ原画スタジオ『ファインガーデン』で働いていて、神原画を描くと一部で有名になっている、並澤和奈(なみさわかずな)だ。彼女の働くスタジオは新潟県選永市(架空?)にあり、『サバク』の聖地巡礼地だった。彼女にとって、縁もゆかりもない地域でどんな行事があり、どんな人が住んでいるかに興味は全くなかったが、突然に聖地巡礼のための企画に参加することになる。

彼女ら三人の物語は別々のものだが、時間軸が重なる部分があり、各々が物語に干渉している。ただ、バラバラなんだけど、物語全体が一つにつながっている。時間軸はほとんど過去→未来であって、3人それぞれが、各時間を受け持っているようになっている。そのため、非常に読みやすい構成になっている。

アニメという特殊な題材を持ってきているので、アニメに対する社会から無理解だったり、ファンの反応や聖地巡礼という文化的な特殊性など、他の業種にはない部分も描かれる。しかし、本筋にあるのは、やはり仕事をする人そのものである。

この話は、
『イケメンアニメ監督と美人プロデューサー』
『地味な女アニメ監督と外ヅラのいいやり手プロデューサー』
『オタクアニメータ女子と熱血公務員』

を四つの章で描いたアニメ業界を舞台にしたお話。

予想以上に面白くて、分厚いですが一気に読んでしまいました。

ananで連載しているのは知っていたけれど、CLAMPの挿絵とチラッと目に入った「声優」の文字ーー。
すぐさま、オタクっぽい話なのだと察知してその手のものをテーマにした作品はあまり好みではないので、雑誌は買っていてもこの作品は全く読んでいませんでした。

しかし、本屋さんの新刊で発見し、あの連載が本になってる!と何だか気になり購入。

イケメンアニメ監督とモデルのように美人なプロデューサーのお話から始まるのですが、アニメ業界の裏側…というよりももっとライトなお話。

著者が後書きに「私の願望も含まれている〜」と書いてあって、それがリアルだときっと過酷すぎる“アニメ業界”という舞台を華やかに魅せてくれています。

少し少女漫画っぽい雰囲気があって、きゅんとしたり、共感したり。
特に最後の『オタクアニメーター女子と熱血公務員』のお話は色々ジワリときました。
自分もオタクで、アニメやゲームが好きですが、このオタク女子の考え方や捻くれたものの見方に激しく共感。
そして反省…。
キャラクターの中で、彼女が一番成長していて、その姿がすごく素敵で清々しい。
ちょっとでも「自分と似てるかも」と思った人なら、きっとたくさんのギクッとする言葉があると思います。

全体的にテンポが良くて、退屈しませんでした。

ただ、これよくananで連載していたなと思いました(笑)
本の帯には「やる気みなぎるお仕事小説」とあるのですが、うーん、なんと言うか、これを読んで「仕事頑張ろう!」とは思えなかった。

すばらしくおもしろかったです。
帯の煽り文句にもある「お仕事小説」に必要なすべてを備えている感じ。
同ジャンルの他作品に比べて突出しているな、と感じた部分は・・・・・・自分が作者の辻村氏と年代が近いからか「ぞくっとした」みたいな、アニメに対する直観的な感動の描写に共感できたところでしょうか。
辻村氏の従来のファンなら当然なのかもしれませんが。

実は『冷たい校舎の時は止まる』『ぼくのメジャースプーン』しか読んだことがありません。2作を読み終えて「他の作品も」と手を伸ばしたところ『凍りのくじら』『オーダーメイド殺人倶楽部』に当たり、どちらも途中で読むのをやめてしまった経験があります。
というのも、作中で登場する「とある実在する作品・作者」をモチーフとして扱いすぎだな、と感じたから。
「そういうことはしたらいけない!」
とは絶対言いませんが、京極夏彦作品にも通じる「過去の作品をとりあげることで読者の共感・好奇心を誘う」手法に反発を抱くタイプの読者を切り捨てる作風なんだな、と思っていました。
なので、当然この作品にも辻村氏の思い入れのある「実在するアニメ」が小道具として用いられるのだろうと思っていたのですが・・・・・、
そういうことはありません!
作中作は綿密な取材の上に練られた、独自のモチーフとして機能していると感じました。
『バクマン。』に登場するジャンプ作品のように、略称などを用意したり、複数のクリエイターによる行事のやり取りが描かれていたり、アニメ業界にかかわる多方面にアピールしたクールな作りです。

・・・・・・ちょっと変則的な読み方をしても楽しいかな?
作中世界は、現行社会をそのまま描写しているわけではなく、なんとなく、現在のアニメ潮流の主流に、もう一本異次元的な流れがあるような気がしました。たぶん、ちがうかもしれませんが、90年代の夕方4時5時6時台、あるいはゴールデンタイムに放映していた、再放送や特撮を含む膨大な作品群『ライジンオー』や『赤ずきんちゃちゃ』とか『ポワトリン』とか、もちろん『エヴァ』のような「夕方枠」を待望しているオタク層が、根強く生き残っているような・・・・・・・そんな空気。

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