日本語の歴史 (岩波新書) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル日本語の歴史 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者山口 仲美
販売元岩波書店
JANコード9784004310181
カテゴリ人文・思想 » 言語学 » 日本語・国語学 » 日本語研究

購入者の感想

非常に面白い本である。日本語の変遷が時代毎に説明されており、上代の日本語がどのように現在の日本語へと変化していったのかをざっと見通すことができる。特に鎌倉・室町時代における文の構造の変化に関する説明は非常にわくわくさせられた。本書を読んで、より詳しく日本語の歴史について知りたいと思うようになった。類書を探してより深く学んでみたいと思っている。

しかし、一方で、本書を読んでいて私は随所に違和感を感じてしまった。私は、この本の著者は非常に思い込みの強い人間であると感じた。そして、その思い込みと私の考えが必ずしも合わないことが多く、それが読んでいてひっかかったのである。それらは本書の内容には直接関係のない部分であるため、なお一層残念に感じられた。これは多分に個人的な好みの問題であると思うが、私には苦手なタイプの文章であった。

例えば、序章に
「世界中の言語がすべて英語だけに統一されてしまったとします。すると、どの地域からも英語という糸で織り成される織物しか出来てきません。それぞれの地域のもっていた独特の風合いが失われ、どの地域に行っても、どこに住んでも、同じ織物しかないのです。ということは、異なる織物同士の間で競争したり、刺激あったりすることがないということです。人は、努力をしなくなります。人類の文化そのものが痩せて廃れていきます。一元化の恐ろしいところです。」
とある。言語が一つだけになったら人は努力しなくなるという論理が全く意味不明である。著者は、言語が一つだけになると文化の多様性も無くなってしまうと感じているようで、それはある程度は認めるが、しかしそこから努力をしなくなり文化が廃れるというのはどうもよくわからない。深く考えずに感覚だけで文章を書いているような印象を受けた。

また、第一章冒頭に

 タイトル通り日本語の変遷を奈良時代から現代にいたるまでコンパクトにまとめた一冊です。
 本書冒頭で著者は「日本語の歴史を知りたいと思っても、実は一般向けに分かりやすく興味を持てるように書かれた本が、残念ながら、今のところ出ていません」と記しています。類書がないというのは言いすぎではないかとは思うものの、本書が大変分かりやすい書であることは確かです。新書が百花繚乱というか玉石混交という昨今、さすが岩波新書といえる、信頼のおける内容で、安心して読めたというのが率直な感想です。

 千年以上にわたる日本語の変遷を見ていく上で、どこに焦点を当てるかは迷うところですが、本書は時代ごとに特色を次のように区分してみせます。
 隣国から導入した漢字という異文化を自家薬籠中の物としていこうとした奈良時代。
 仮名を生み出したことによって新たな文体を生んだ平安時代。
 貴族社会から武家社会への移行が係り結びなどの文法の変化をもたらした室町時代。
 政治の中心が江戸に移って発音や語彙の近代化が進んだ徳川時代。
 そして幾度も挫折の危機に直面しながら言文一致体を達成した明治・大正時代。
 気の遠くなるような時間を経て現代の日本語へとたどり着いたこの歴史を顧みると、先人たちの言葉に対する苦闘の跡がしのばれます。

 日本語は語彙が豊富であるため、1000の単語を覚えただけでは60%くらいしか表現が出来ないとか。本書によれば、1000の単語を覚えれば英語は80%、フランス語なら83%は理解できるという調査結果もあるそうです。
 その豊かな母語を受け継いだ私たちは、果たして次の世代へときちんとつなげることが出来るのでしょうか。

 なお、日本語の未来を占う上で参考になる以下の書を紹介しておきます。
 城生佰太郎「ことばの未来学―千年後を予測する」 講談社現代新書

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

日本語の歴史 (岩波新書)

アマゾンで購入する
岩波書店から発売された山口 仲美の日本語の歴史 (岩波新書)(JAN:9784004310181)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.